「収入が増えても幸せにはならない」は誤りだった 格差是正に取り組まなければならない納得理由

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子どもの医療もそうだ。そのことはアン女王の不運を思い出してみればよくわかる。

当時、最高の権力者だったアン女王は、1684年から1700年までのあいだに17回妊娠した。そのうちの16回が死産か、流産か、あるいは子どもの早世に終わった。

300年後の現在、最も貧しい親でも子どもに死なれることは稀だ。衛生と医療の進歩は無数の命を救っている。また今では、実質賃金で見ると、ほとんどの国の労働者が1日で、1900年の労働者の1週間ぶんの賃金を得てもいる。

社会に多大な恩恵をもたらした「分業化」

農耕からインターネットまで、技術は経済活動における諸革命の原動力となってきた。また比較優位も社会に恩恵をもたらしている。あらゆる労働市場で、分業化が果たした役割は計り知れないほど大きい。

もしみなさんがなんらかの技能を磨いた経験をお持ちなら、スペシャリストの集まりのほうがゼネラリストの集まりよりも高い生活水準を実現できるであろうことは、感覚的に理解できるだろう。

同じ原則は、個人間だけでなく国家間にも当てはまる。各国は貿易を通じて、それぞれ自分の最も得意とする分野に専念できるようになる。貿易相手を持つことは、脅威ではなく、チャンスにつながる。貿易は現代の経済を支える要であり、現代の繁栄は貿易によって生み出されたものだ。

中国の何億もの人々がこの数十年で貧困から脱することができたのも、中国が国際舞台でふたたびその人口規模に見合った影響力を持つようになったのも、貿易に負うところが大きい。

最近は、生活水準が向上することが当たり前のように思えてもおかしくないかもしれない。かつては世界の多くの人々が封建制や植民地支配や奴隷制によって抑圧されていた。

心理学者スティーブン・ピンカーが百科事典で好きな項目は、「感染症だった」と説明されている天然痘の項目だという。

最後の100年間だけで5億人の命を奪った天然痘も、人類の進歩のおかげで、今や過去形で説明することができる。

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