「収入が増えても幸せにはならない」は誤りだった 格差是正に取り組まなければならない納得理由

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ピンカーによれば、食生活の改善と学校教育の普及の結果、人々のIQのスコアも急速によくなり、現在では平均的な人でも、1世紀前の人々の98%より高スコアを収められるという。

ヨーロッパでは一般の人が殺害される確率は、500年前と比べ、10分の1以下に低下した。ジェンダーや人種や性的嗜好(しこう)についても、世界じゅうで進歩的な考え方が広まっており、今の中東の若いイスラム教徒は1960年代の西ヨーロッパの若者と同程度に寛容になっている。

またかつては贅沢品だった水洗トイレや、冷蔵庫や、エアコンや、洗濯機は数世代のあいだに必需品へと変わった。

収入が多い人ほど幸福度が高い

では、成長はわたしたちをそれだけ幸せにしたのだろうか。

1970年代に経済学者のリチャード・イースターリンが生活満足度に関する初期の国際調査の結果から、ある一定の水準に達すると、そこからはもういくら収入が増えても、より幸せになることはないという結論を導き出した。以来、この「イースターリンのパラドクス」が世界で広く定説とされてきた。

しかし2000年代に入り、かつてよりはるかに大規模な調査にもとづく分析が行われ、定説が覆された。それによると収入が多い人ほど、幸福度は高まっていた。また国家間の比較でも、所得が高い国の人ほど、幸福度が高かった。

幸福度だけでなく、この新しいデータには、所得が高い人ほど、または所得が高い国の人ほど、十分に休息を取り、人から敬意を払われ、よく笑い、おいしいものを食べていることが示されている。

また所得が高い人ほど、あるいは所得が高い国の人ほど、肉体的な苦痛や、退屈さや、悲しさを感じることも少ない。

さらに、所得が高い人ほど、恋愛もしている。ポール・マッカートニーは「お金で愛は買えない」と歌っているが、残念ながら、お金で愛は買えるようだ。

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