そのうち電話に出るのがこわくなり、会社に向かおうとすると、お腹が痛くなったり、電車の中で激しく動悸がしたりするようになったそうです。結局、出社できなくなり、相談に来たケースです。固定電話を使ったことがない若い社員に多い事例といえましょう。
また似たような例で、在宅勤務にもかかわらず、「電話に出るのがこわくて退職した」という例もありました。コロナ禍で、在宅ワークに切り替わったときのことです。上司からかかってきた電話にすぐ出られず、「何してたんだよ。業務中なのに出ないってどういうことだよ」と叱責されたことがきっかけになりました。
おそらく、上司は部下の姿が見えないことで、疑心暗鬼になっていたのでしょうが、在宅勤務中でも、トイレに行くことはあるでしょう。何かのタイミングで電話に出られないこともあります。
私自身もコロナ禍のときは、自宅で電話相談の仕事をしていましたが、会社からの事務連絡の電話に出なかったことで、激怒されたことがありました。
電話相談では、相談者は声を頼りに話を進めるために「音」にひじょうに敏感です。よって、スマホの着信音等にも気を遣い、消音モードにしていたために気づくのが遅れたのですが、説明すらできない状況でした。
私の場合、その仕事はあくまでもたくさんある仕事の一部であったにもかかわらずダメージを受けたので、会社から社用携帯を持たされ、24時間つながっている場合、そうした状況にプレッシャーを感じるのもうなずけます。おそらく、それがきっかけになり電話恐怖症につながってしまうこともあります。
2015年ごろから顕著になってきたこと
「電話がこわい」という傾向は年々強くなっています。最近では、電話応対をしている最中に泣き出してしまう例も出始め、電話恐怖症は若者の間で定着しつつあるのではないかと感じます。
もうひとつ、同時期から顕著になってきた傾向があります。
それは、自分の意思を伝えられない人が増えてきたということです。私が以前から新人研修で必ず聞く質問があります。
それは「もしランチセットで食後にコーヒーを頼んだのに、紅茶が来てしまったとき、あなたはどうしますか?」というものです。
2015年以前ですと、「店員さんに言って、注文通りのコーヒーに替えてもらう」という人が7〜8割でした。しかし最近では、「替えてもらう」のは5割弱。つまり半数以上の人は「黙ってそのまま紅茶を飲む」というのです。
コーヒーが飲みたかったのに紅茶が出てきたとき、なぜ「替えてください」というひと言が言えないのでしょうか。
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