日本のお家芸「柔道マンガ」の民主化と男女平等 「柔道部物語」「帯をギュッとね!」「All Free!」

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よく知らずに入った柔道部だったが、実は前年の県大会で準決勝進出の強豪だった。地区大会で先輩たちの強さを目の当たりにした三五はいたく感動、「俺も強くなりたい!! 早く試合に出たい!!」とファイトを燃やす。

まったくの初心者が厳しい練習により才能を開花させ、日本一を争うまでに成長する3年間を、時に熱く時にコミカルに描く。柔道シーンの迫力とキレはピカイチ。三五が柔道の面白さにハマり、“強くなる快感”に目覚めていく様子が、読んでるほうにも自分事のように伝わってくる。

ライバルたちとの戦いを描きながら、「死闘」という言葉は、この作品には似合わない。試合中は真剣でも、それ以外の場面ではむしろ脱力させられることが多い。何しろ指導者である五十嵐先生が気力充実のためのトレーニングとして課したのが「俺って天才だああああ」「俺ってストロングだぜえ」の連呼。県予選に臨む際の掛け声が「せっかくここまでハードに練習してきたんだから‥‥優勝しなきゃ損だぜ~~」なのだから、熱血スポ根にはほど遠い。三五が「必殺の背負い養成マシーン」で特訓に励むシーンは、過去のスポ根もののパロディとして見るべきだろう。

『柔道部物語』
小林まこと『柔道部物語』(講談社)ヤンマガKCスペシャル2巻p118-119より

ありえないレベルの太眉の三五をはじめ、個性豊かなキャラたちの顔芸も見もの。最強ヒールの西野新二が登場した終盤はややシリアスな場面が増えるものの、にぎやかな部活の空気感に魅せられる。合間に少しだけだがラブコメ的要素もあり、柔道×青春ドラマとしても秀逸。陸上青春小説『一瞬の風になれ』で吉川英治文学新人賞を受賞した佐藤多佳子も、その物語づくりの原点は本作にあると公言する掛け値なしの名作だ。

平成の名作『帯をギュッとね!』

その『柔道部物語』に優るとも劣らぬ平成の名作が、河合克敏『帯をギュッとね!』(1989年~95年)である。北中3年の主人公・粉川巧(こがわ・たくみ)が初段の昇段審査を受けに行くところから物語の幕は開く。

『帯をギュッとね!』書影
河合克敏『帯をギュッとね!』(小学館)少年サンデーコミックス1巻。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

審査会場には、同じ柔道部の主将である杉清修(すぎ・せいしゅう)、南中の主将・斉藤浩司、東中の主将・宮崎茂、同じく東中の三溝幸宏がいた。学校は違えど、大会や合同練習などで顔を合わせたことのある5人は、そろって初段=黒帯をゲット。しかも、そろって県立浜名湖高校に進学する。

ところがなんと、浜名湖高校には柔道部がなかった。そこで彼らは柔道部を新設、1年生部員5人だけでスタートすることになる。先輩がいないのだから、シゴキもなければ上下関係もない。通常5人で行われる団体戦には全員出場。いささか都合よすぎる気もするが、これほどわかりやすい設定もない。そもそも第1話が「5人の出会い」と題されており、5人チームを前提とした物語なのである。

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