知っておきたいランサムウェア「身代金」の法規制 日本には支払い自体を禁止する法律はないが
まず、日本の法律である外為法、テロ資金提供処罰法が適用される可能性がある。
外為法は制裁対象者への無許可の支払いを禁じているが、少数のランサムウェアグループしか対象とされておらず、ランサムウェアグループは多数存在するうえに次々と新たに登場しているため、ほとんど制裁対象者に該当しない。
テロ資金提供処罰法は、身代金の支払先が特定の活動を行うテロ集団であることが前提となるが、ランサムウェアグループが当該テロ集団であることを特定できる可能性も極めて低い。
さらに、特段の不利益があるわけではないが、身代金の支払いが犯罪収益移転防止法の疑わしい取引の届出対象となり、事情を確認される可能性がある。疑わしい取引の届出は、マネーロンダリングを防止するために、金融機関などが情報を集約して捜査に役立てることを目的とする制度であり、身代金の支払いが捜査対象になりうる。
一方、海外の法規制にはさまざまなものがあり、とくにアメリカのOFAC規制には注意すべきである。OFAC規制は、日本の外為法と同様、アメリカの外交政策・安全保障上の目的から特定の国・地域および制裁対象者(SDN)リストに掲載された個人・団体等を対象として取引制限や資産凍結等の措置を講じるものである。
近年、ランサムウェアグループの首謀者などが制裁対象者リストとして多数追加されているため、これらの者への支払いはOFAC規制に違反するおそれがある。OFAC規制違反になれば刑事罰や制裁金の対象となり、アメリカの外国為替市場の取引制限や物品取引の禁止措置等もありうる。
反社会的勢力への利益供与に該当しないか
身代金の支払いが反社会的勢力への利益供与に該当しないかも問題になる。多くの企業は反社会的勢力との関係遮断を基本方針としており、各種の契約書には反社条項を規定していると思われる。身代金の支払いがこのような方針または契約条項に反しないか。
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