「サイコパス」の冷徹さは何らかの役に立つのか 「うまく機能しているサイコパス」に向いた仕事

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そこで疑問が湧いてくる。そのような実状を知りながら、いったい誰が「やってみたい!」などと思うのか? あいにく、そう思う人がいる。ダークトライアドの特性を持つ人々だ。

彼らは、自分は特別だ、だから前任者たちを見舞ったリスクは自分には当てはまらない、と思い込んでいる。「あいつらは間抜けだったから八つ裂きにされた。だが、私は金輪際そんな目には遭わない」と。

そのうえ、独裁者は、ダークトライアドの頂点にいる人にとって、夢の仕事だ。マキャヴェリストのように権謀術数の限りを尽くし、ついには完全な支配権を獲得する機会が得られるからだ。

精神病質のおかげで、彼らは誰でも好き勝手に選んで虐待できるし、拷問さえもできる。そのうえ、ナルシシスティックな面にとってはなおさら嬉しいことに、彼らがそういう行為に及ぶ間、誰もが称賛してくれる。「ボス、今日は足の爪を引っぺがしたときが、とびきり見事でしたね」などと、部下がおべっかを使う。

ありがたいことに、独裁者の虐待に苦しまなければならない人は、私たちのなかにはほとんどいない。

だが、独裁者を権力の座へと押し上げるダークトライアドの特質は、私たちが日常生活で出会う人の何人かを助けている可能性もある。一部の職業には、マキャヴェリズムや精神病質やナルシシズムがある程度必要なのかもしれない。

「うまく機能しているサイコパス」

オックスフォード大学の研究専門の心理学者のケヴィン・ダットンは、著書『サイコパス』で、そう主張している。

人はダークトライアドの特質が多過ぎると、機能不全の極悪人になるが、脳の異常を自分に有利になるように活用する術を見つけ出した「うまく機能しているサイコパス」は大勢いる、とダットンは言う。

この考え方は新しいものではない。私たちにとって、精神病質は水準が高過ぎたり低過ぎたりすると良くないが、ほどほどで、制御されていれば、ストレスの下でうまく立ち回ったり、不合理な情動に基づいて間違った決定を下すのを避けたりするのに役立つ、と社会学者のジョン・レイが1980年代に述べている。

ダットンとレイの言うことには一理あるかもしれない。冷徹で、ストレスや情動に影響されないと、きわめて有益な職業もある。

ダットンは、外科医や特殊部隊の兵士といった例を挙げている。両者は、情動を最大限まで鈍らせたときに、最も力を発揮する。

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