「エモい」「キモい」を文章で気軽に使う危うさ 手軽な表現ゆえに「断絶」させてしまうものも

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

世間では、いわゆる撮り鉄と言われる人があちこちで迷惑や騒動を起こしている時期でもあった。列車の撮影のために入ってはいけない場所に入り込んで列車を停めるなど、そういう事件が起こっていた。ネットを中心にそういった鉄オタたちへのヘイトが向かっていて、良いイメージを持っている人が少ない状況だった。

僕自身も鉄オタと言われればけっこう厄介な存在、という思考がなかったといえば噓になる。鉄オタが悪いのではなく、鉄オタという単語に悪いイメージがついている、少なくとも僕の感情はそう判断したのだ。

「感情」が「文章」に変化していくのが怖かった

しかし、僕の記事を読んでもらったらわかると思うけど、僕が旅先で出会う鉄オタっぽい人は、親切であり、熱心であり、気さくで、尊敬に値する人々ばかりだった。迷惑な人なんていなかった。だから、そういう人を一緒くたに「鉄オタ」と表現することを僕の感情が拒否した。

文章で伝えるときいちばん大切なものは、感情である。 読みたくなる文章の書き方29の掟
『文章で伝えるときいちばん大切なものは、感情である。 読みたくなる文章の書き方29の掟』(アスコム)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

たかだか単語だが、それは僕の感情だ。それを無視して「鉄オタ」という表現を使い続けていると、それはいつか、そういう人たちを見下したり、バカにするような思想に、行動に、文章に変化していく、それが怖かったのだ。

そして、それは読んだ人も気分がいいものではないだろう。そういう思想はけっこう透けて見えるものだ。そんなものを読んでおもしろいと思ってくれる人もいないし、誰かの心を震わせることもない。だから僕は表現としてわかりにくく、適切でなくとも「剛の者」と表現する。そこにはリスペクトの意味が込められている。

この記事は、実際に多くの人に支持され、拡散された。素人が鉄道ネタを扱うことを嫌いがちな剛の者たちの多くも賞賛し、拡散してくれた。

こうしたひとつの単語だけとっても、どういう感情を自分が抱いたのか、それはなぜなのか、紐解いていくべきである。見過ごさないことだ。

それができるようになるには「キモい」だとか「エモい」だとか断絶の言葉なんか使っていられない。もっと丁寧に、自分の感情に向き合う訓練をしなければならないのだ。

pato(ぱと) ライター、「Numeri」管理人

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ぱと / pato

ネット黎明期の2000年代初頭にサイトを開設。まったく誰にも読まれていなかったところから文章を鍛錬しつづけ、一躍人気サイトとなる。ライターとして複数の媒体で記事を書くようになると、たんなる商品紹介やPRを超えた「読ませる」文章に、ファンがじわじわと増えていく。JR東海クリスマスエクスプレスのCMへの愛を爆発させた分析記事や、『鬼滅の刃』にまつわるエッセイなど、100万PV超えの記事を連発。『日刊SPA!』で連載を持つほか、『Books&Apps』、『SPOT』、『さくマガ』など、数多くのメディアに寄稿。各界のクリエイターや芸能人の中にもpatoファンを自称する人は多い。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事