「一流の料理人」の条件は?「伝説の農家」語る裏側 「食べる苔」「蟻のトッピング」…一体何が違う?

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2002年、飲食店向けに年間100種類以上の野菜を出荷する浅野の畑に初めて行った日のことを、奥田氏は楽しそうに振り返る。

「いきなり『食べてみろ』って浅野さんに渡されたのが、パセリの根っこです。でもあれ、おいしいんですよ。朝鮮人参みたいな味がする。いろんな色・形をした野菜があるだけでなく、食べられないと思っていた部分も料理に使えるんだとわかりました」

アル・ケッチァーノ ペペロンチーノ
庄内の自然をほうふつとさせる「野草と野菜のペペロンチーノ」(写真提供:タカオカ邦彦)

「異端者」が「食の都」を創り上げた

奥田氏は当時から、庄内の在来種の野菜や野草、山菜などを積極的に料理に取り入れていたが、業界では異端視されていた。イタリアンならイタリアの食材を使うのが当たり前とされていた時代だからだ。

時折弱気な様子を見せる奥田氏に、浅野はこんな言葉をかけたという。

「山形は食材の宝庫じゃないか。一歩外に出たらいくらでも食材がある環境が、みんな羨ましいだけだよ」

何度も畑に通ううち、自分がしていることは間違っていないと確信した奥田氏は、「庄内を食の都にします」と地元で宣言。生産者と密な関係を築くことで、その料理はさらに自由度と創造性を増していく。

「藤沢かぶ」「平田赤ねぎ」「外内島きゅうり」「月山筍」「民田なす」といった在来作物を積極的に取り入れ、消滅寸前の作物の保存・継承にも取り組んだ。「食の都庄内親善大使」として庄内の食文化の発信に貢献した結果、2014年、鶴岡市はユネスコの「創造都市ネットワーク」食文化部門の加盟認定を受けている。

平田赤ねぎ
庄内地方の在来作物として知られる「平田赤ねぎ」(写真:Caito/PIXTA)

信念を貫き、誰にも真似できないものを創り上げることのできるシェフには共通点があると浅野は言う。

「みんな、子どもみたいな好奇心と探求心を持っていることだね。未知の食材に、自分から飛びつく。使ったことのないものを使いたがる。『noma』のレネ・レゼピシェフもそうだったな」

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