デジタル時代にテレビが「勝つ」唯一の理由 マードック家御曹司が描くメディアの未来

数年前、ジェームズ・マードックがロンドンからニューヨークに戻ってきてまもなくのこと。マードックは友人から、若きインターネット系起業家のジョー・マーキースを紹介された。
ジェームズ・マードック(42)は「メディア王」ルパート・マードック(84)の息子だ。将来的には父が築いたメディア帝国のトップになると目されており、急成長中のネットメディアについて強い関心を抱いていた。
一方、マーキースは「トゥルーX」という小さな新興企業の共同創業者だった。トゥルーXはネットやモバイル端末、デジタルテレビにおける従来型の広告やCMに代わり、インタラクティブ広告を普及させようとしている会社だ。
マードックとマーキースは月に1回程度会っては、メディア業界の未来について語らうようになり、マードックはトゥルーXの取締役に就任した。
今年に入り、ルパート・マードック(84)が最高経営責任者(CEO)を務める21世紀フォックスは、2億ドルでトゥルーXを買収する交渉をまとめ、マーキース(33)はフォックス傘下の「フォックス・ネットワークス・グループ」の社長となった。
巨大なメディア帝国を築き上げてきたマードック
ジェームズ・マードックのトゥルーXの扱い方、それにここ2年間の、投資家との会見などの折りに行っている発言からは、彼が21世紀フォックスの未来をどのように思い描きながら世代交代に備えていたかが垣間見える。
関係者によれば、近々ルパート・マードックはジェームズを同社の後継CEOに指名するとみられる。ジェームズの兄のラクランは共同会長に就任する。
ルパート・マードックは1954年にオーストラリアの新聞1紙のオーナーになったのを皮切りに、巨大なメディア帝国を築き上げた。ジェームズは21世紀のメディア業界の激動の中、ラクランと手を携えて21世紀フォックスを引っ張っていくことになる。
本紙は21世紀フォックスにジェームズ・マードックへの取材を申し込んだが実現しなかった。だがマードックはこの1年、同社の投資家向けの顔として以前に増して大きな役割を担ってきた。また、トゥルーXやバイスといったネットメディア企業の取締役にも就任している。