週刊誌と芸能人の「裁判バトル」の知られざる実際 「訴訟取り下げ」で動かないケースも
とはいえ、実際に裁判となるケースは極めて少ないのが実情だ。「法的手段を取ります」は事実無根をアピールするだけの場合も少なくない。“かけ声”だけで実際には訴えない場合に加えて、途中で訴えを取り下げるというケースも稀ではない。では、いったいなぜ途中で訴訟を取り下げるのか。
「いちばん多いのは、争っても勝てないということがはっきりした場合です。ほかには、裁判費用が捻出できなくなったり、仕事が忙しくなり裁判に割く時間がなくなるなどの理由も。いずれにせよ、世間の反応は“勝てないから諦めた”と捉えがちです。つまり、“記事の内容は事実だったから、裁判で争っても負けることが明白になったからだ”と」(前出・老舗芸能事務所幹部)
裁判には相応の時間が
『週刊女性』2022年4月26日号は、俳優の木下ほうかに強制性交された被害を訴える女性の告白を報じている。女性の告白は、実に生々しかった。『文春』でも性加害が報じられており、続けざまに記事が出たことで、当然だが仕事がキャンセルになるなど窮地に立たされた木下は、『週刊女性』の発行元である『主婦と生活社』を相手取り、550万円の損害賠償などを求める民事訴訟を起こしたのだった。
しかし、木下は2023年の6月に訴えを取り下げた。理由は定かではないが、上記のうちのどれかだろう。訴訟を取り下げたことで、木下はマイナスイメージがより強くなった。上述のとおり、世間の反応は「やっぱりね」となってしまう。
「法的措置!」と声を上げものの、その後、何の動きも見られなかった例としては、「闇営業騒動」の際、反社会的勢力の会合に参加し“ギャラ飲み”と報じられた宮迫博之や、写真誌に同じく“反社”の人間と一緒にいる写真を掲載された加護亜依が記憶に新しい。宮迫は結局、訴えることを止め、加護はその後何の動きもない。
週刊誌を相手に訴訟を起こして注目を集めた裁判といえば、『爆笑問題』太田光VS『週刊新潮』だ。「太田の父親が800万円を渡して、太田を日本大学に裏口入学させた」という2018年8月の報道に対し、太田側が約3300万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟は、一審判決で発行元の新潮社に440万円の支払いと、ウェブ上の記事削除を命じた。2022年12月24日に行われた知財高裁の第二審では、一審判決を支持し、判決が確定した。