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ウクライナで失った権威回復をガザで狙うプーチン

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  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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10月30日、安全保障会議を主宰するロシアのプーチン大統領(写真・Sputnik/共同通信イメージズ)

イスラム主義勢力ハマスによるイスラエル攻撃から2023年11月7日で1カ月。パレスチナでの歴史的流血が続く中、プーチン氏が複雑で巧妙な外交を展開している。どんな外交なのか。狙いは何なのか。その成否の見通しも含めて考えてみた。

今回のプーチン外交の狙いは大きく分けて2つある。最大のものは、ウクライナ情勢から中東情勢へと、国際的関心をできるだけそらすことである。

ウクライナ侵攻を受けて米欧日に包囲網を築かれ、国連でも孤立感を味わっているロシア。プーチン氏としては、ワシントンや欧州各国の注意がパレスチナ情勢に注がれる結果、米欧のキーウへの武器支援が減り、対ロ制裁の緩和につながることを期待している。そうなれば、ゼレンスキー政権の立場を弱めることができる。

ガザにおける人道状況が悲惨であることは誰の目にも明白であるが、プーチン・ロシアは、ウクライナ紛争を巡る独自の思惑を懐に抱えて、国連などでガザでの停戦要求など声高に主張しているのだ。

米欧との「地政学的均衡」とは

もう1つの目的は、米欧との「地政学的均衡」の実現だ。今回の事態発生を奇貨として、プーチン氏は元々反米意識の強いアラブ世界においてロシアへの親近感を回復し、世界規模での孤立解消、あるいは米欧に対抗できる国家群の形成に向けた第一歩にすることを狙っている。これが「地政学的均衡」だ。

このため、プーチン氏は極めて手の込んだ外交を展開している。ハマスによる今回のイスラエル攻撃自体は「テロ」として批判する一方で、この攻撃を実行したのはハマスの一部に過ぎないとの立場だ。

そのうえで、攻撃直後にクレムリンにハマス代表団を迎えるなど、長年緊密な関係を維持してきたハマス寄りの立場を打ち出した。国内でイスラム過激派の動きに神経を尖らせているプーチン氏としては、反テロは基本政策だ。

このため、反テロの表看板を下ろさない一方で、その裏で実質的にはハマスとの関係維持を優先するという建前と本音の使い分けをしたのだ。ただその後、ハマスによるイスラエル市民への攻撃が続いていれば、この使い分け外交も苦しくなる可能性はあった。

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