名カメラマンの篠山紀信さんが言っていたのだが、いいカメラマンとは、写真がうまい人ではない。撮るべき人の前でシャッターを押せる人である。いまこの瞬間にも、たとえば大谷翔平の目の前に立てる人は、それほど多くはない。「時代を象徴する人の前に立ってシャッターを押すこと」ができるのが大事なのだ。
これは、クリエイティブな仕事に限らない。「話題の人の横にいること」こそが最も重要なのだ。
それぞれの業界に、圧倒的な才能を持った新人、時代を動かしているスター、誰もが憧れるレジェンドがいるはずだ。そういった怪獣人間たちは源流にいて、半年後、1年先に世の中がアッというものを仕込んでいる。下流にいる多くの人たちは、上から流れてきた薄まったもの、遅れたもので勝負するしかない。そこには、圧倒的な差がある。
スティーブ・ジョブズのような怪獣人間と一緒に仕事をすれば、おそらく死ぬほど大変だ。だけど、めちゃめちゃ大きな仕事になるし、歴史的な仕事になる。「怖いし大変だから、できればそういう人からは離れていたい」と思って、振り回されない安全なところで細かい仕事をするのもありだが、いつもそれでは楽しくない。
大きなビジネスの源流をたどれば、そこに怪獣人間がいる。自分は特別な人間ではないからこそ、怪獣人間と出会い、仕事をする。その立場こそ価値なのだ。
SNSなら1日100人と会える
そうした怪獣人間を、いかにして見つけ出すか。
僕は怪獣人間や怪獣人間っぽい人たちを、ざっと30人ぐらい頭の中にずっと入れていて、間接視野でウォッチしている。あの人はあんなことをやっている、この人のこんな話題が盛り上がっている、いま伸び悩んでいる、やりたいことを見失っている、グングン成長している、といったことを絶えずなんとなく意識している。
だから、企画書を書くために調べるというよりも、つねにいろいろな企画が自然に頭の中に浮かんでいる状態だ。遊んでいるときも、四六時中考えているから、一番いいタイミングで「いまだ」とすかさず声をかける。仕事につなげる。
つまり、頭の中が怪獣人間の養殖場みたいになっている。誰かに本を依頼しようとして、その人のことを調べて、そこから企画書を書いて、社内の会議で了承を得てからメールする、みたいなことをしているわけではない。24時間365日、頭の中の怪獣人間と会話をしているのだ。彼らと時代が交錯するのを待っている。
面白い怪獣人間を探すための情報収集は、SNSが中心だ。情報量は実社会の1万倍くらいだ。SNS上では毎日スターが生まれたり、喧嘩が起きたりしている。
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