崩壊している資本主義の後に来るものは何なのか 「ラグビーワールドカップ」でわかる国家の行方

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ラグビーワールドカップは、年を追うごとに世界的な盛り上がりを高めているし、バスケットボールのワールドカップも始まった。もはや、3月にワールドベースボールクラシックで日本が優勝して国民が感動したのが忘れられかけているぐらい、毎日毎日、スポーツ観戦というエンターテインメント分野において、国家代表を応援して楽しむという消費活動がますます盛んになっているようだ。

「国家代表が対決する世界大会」はすばらしいビジネス

なぜか。もちろん、それは、主催者側と広告代理店などのイベント屋が努力して動員を仕掛けているからである。この「国家代表が対決する世界大会」というイベントは盛り上がるし、何より儲かる。

なぜなら、すべての試合に一定数以上の観客が集まるからである。すなわち、日本戦であれば、日本の消費者は見る。フランス開催でフランス戦なら、スタジアムは超満員である。

しかし、スポーツだけを見るとなると、「日本対チリ戦」などという結果が見えている実力差のある試合など、ほとんど誰も見ない。「結局、今大会で楽しめた試合は『アイルランド対ニュージーランド戦』だけだった」ともなりかねない。

オリンピックの柔道なら、決勝戦だけ見ればいい。しかし、それではほとんどの試合がガラガラになってしまう。視聴率もゼロになってしまう。

一方、日本を応援して熱狂したい人々は、日本戦はすべて見る。ラグビーとしては接戦でなくとも、応援しているチームが圧倒的に勝つのを見るのは爽快である。だから、むしろみんな見るし、満足度も高い。盛り上がる。

各国代表それぞれに各国民がいるから、すべての試合がそうなる。だから、すべての試合で儲かる。そして、決勝戦はもちろん儲かる。すばらしいビジネスである。

オリンピックはまさにすばらしい発明である。1984年のロサンゼルスオリンピックは「商業五輪」の原点と言われるが、2002年のソルトレークシティーオリンピックなどは、IOC(国際オリンピック委員会)の理事のほとんどが賄賂をもらっていることが判明したにもかかわらず、公務員でないため罪にならず、辞職で済んでしまった。

2021年の東京オリンピックでも壮大な汚職が明らかになったが、大半の人々はオリンピックというエンターテインメントを失いたくないから、都合の悪い事件は忘れてしまい、オリンピックは依然盛り上がる。2030年の冬季オリンピックは、再びソルトレークシティーになる可能性もあるようだ。

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