「中小企業に歓迎されると思った」50代男性の嘆き 早期退職し転職先探すも声がかからない会社員

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ここまで事例を見てきたが、以下では50代の多くがかかえる問題の根因について河西氏を例に解説する。 

■50代の多くがかかえている問題

「誰もが長生きしたいと願うが、誰も老人にはなりたくない」

これはスウィフト『ガリバー旅行記』に出てくるセリフです。

18世紀のアイルランドを生きた人々も、私たちと同じく「老いへの恐れ」を抱いていたことがわかります。

そこから300年、私たちは当時より長生きできるようになりました。この先まもなく多くの人が「100年生きる」時代がやってきます。

しかし、平均寿命の物理的な長さは、質的な豊かさを保証してくれません。「老いへの恐れ」はむしろ大きくなり、ときに長生きが不幸を招くことさえあります。貧困・病気・家庭不和……そんな老後だとしたらたしかに老人になりたくありません。

書店で怒鳴った河西氏は架空の人物ですが、個々のエピソードはすべて実話に基づいています。

・早期退職の失敗
・役職定年への不安
・会話のない家庭

これらは決して人ごとではありません。50代の多くが抱えている問題です。

人生100年時代といわれる長寿時代のいま、これまで国がつくってきた各種社会保障制度がうまく機能しなくなってきました。

老人の面倒をみきれなくなってきた国は、会社へその面倒を押し付けます。高年齢者雇用安定法が改正され、会社は段階的に「定年の引き上げ」を行っています。しかし会社のほうにも余裕がありません。「雇用は守るが給料は保証しない」役職定年制度によってなんとか対応しているといったところ。

いつの時代にも起こる「誰が高齢者の面倒をみるか」の押し付け合い。それが日本でも起こっています。だからこそ、私たちはスウィフトの言葉に挑戦したいのです。「長生きして、明るく楽しく過ごす」——目指すべきはこれです。

いつまでも気の合う仲間と食べて飲んで働いて笑う。年下の人から「あんなふうに年を取りたい」と見本のように過ごす。そんな老後を目指したいもの。

その道のりは簡単ではありません。少し間違えると河西氏のような「不機嫌な老人」への道を歩んでしまいます。

それを避けるにはどんな準備をすればいいのでしょうか?

優雅な「年金暮らし」は過去の話

河西氏のような50代クレーマーが増えた背景には、高齢サラリーマンに対する会社の処遇が悪化している事実があります。

この国の会社は「雇用を守る」ことを大切にします。簡単に従業員をレイオフする欧米の会社と比べて、その家族経営的態度は立派ですが、しかしながら「雇用を守る」のは稼ぎがあるからできること。収益力が落ちた会社で「待遇は悪くなる」のは仕方ありません。

かつての栄華を誇った巨大メーカーで役職定年制が導入されたり、年功序列賃金の見直しが行われているのは必然の流れでしょう。日本の会社がかつての輝きを取り戻すならともかく、これからも業績低迷が続くとしたら、高齢社員の冷遇は止まらないことでしょう。では河西氏のような50代はどうすべきなのでしょうか?

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