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キャリア・教育 #教養としての着物

着物を何気に見る人が気づかない日本文化の深さ 季節やうつろいを大事に、独特の家紋文化も残す

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  • 上杉 惠理子 和装イメージコンサルタント、「和創塾 ~きもので魅せる もうひとりの自分~」主宰

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着物には日本文化の本質が詰まっています(写真:Ushico/PIXTA)

「着物はTPOや季節の細かなルールがあって難しい」「この着方は正しいの?間違っているの?」というお声や質問をよくいただきます。

TPOとはTime(時間)、Place(場所)、Occasion(場面)に相応しい装いのルールのこと。着物でも洋服でも、TPOに合った装いを整えることは、相手や「場」を大切にする敬意や思いやりの表現になります。だからこそ、装うものひとつひとつの格を理解し、TPOに相応しい装いを選ぶことはとても大切です。

ただ、「こうしなければいけない」というルールを覚える前に、「なぜそうなるのか」意味や歴史を考えてみませんか?

拙著『世界のビジネスエリートを魅了する 教養としての着物』でも詳しく解説していますが、着物には色や柄、素材など、1000年の時をかけて日本人が育んできた美意識が凝縮されています。TPOや季節ルールの背景にある意味を考えてみることで、「何を美しいと感じてきたのか」「どのように相手への礼を表現してきたのか」という、日本文化の本質に触れることにつながります。

桜柄は満開になったら着ない、その理由は?

日本の春と言えば、桜。日本を代表する花のひとつであり、桜の開花情報を楽しみに、毎年お花見の計画を立てる方も多いかと思います。桜の着物を着て、お花見をしたいと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、着物の世界では、写実的に枝葉とともに描かれた桜柄の着物や帯は、「桜が満開になったら着ない」という考えがあります。季節を先取りして、桜が咲き始める頃に着て、満開になったら着ない。これだけ聞くと、「着物はルールが複雑なのですね」とハードルが高いと感じるかもしれません。

「桜が満開になったら桜柄は着ない」理由は、どんなに素晴らしい桜柄の着物でも、本物の桜の美しさにはかなわないという考えがあるからです。自然の美しさへの畏怖やリスペクトがあるのです。儚く移り変わる自然の美しさを繊細に捉える感性が、桜柄は満開になったら着ないという考えになっているのです。本物の桜が満開になったら、着物よりも本物の桜を見て楽しもうという感性です。

そして、桜柄は早すぎてもいけないとも言います。なぜなら、桜の前に咲く梅がヤキモチを焼くと考えられているからです。このように、自然の美しさに心奪われ、季節やそのうつろいを大事にすることが、日本文化の本質だと言えます。

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【学校の制服に夏服・冬服があるように】

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