ヒロミが歌う「ママの歌」、"遠隔夫婦漫才"の絶妙 妻・松本伊代との安定の関係性に見るもの
ただ、芸能というものは無関心より好き嫌いが生じたほうがよく「好き」が半分もあれば商売になる。ヒロミが約10年間のブランクから復活できた理由も、そこにあるのだろう。
復活後、彼が「ママ」の天然をネタにしつつ、息子たちに対しては「ママを泣かせたら俺が許さない」と言っているというのもわりと知られている。そんな「愛あるいじり」が最近の好感度にもつながっているわけだ。
大復活のカギは「家族愛」
『うたコン』の2日前には『ボクらの時代』(フジテレビ系)に出演。芸能界からいったん離れた理由について「仕事が来なくなったらやめなきゃいけない。そうなるくらいなら自分で決めたかった」という意味の発言をした。
そして、復活については「そんなに芸能界も甘くない」し「若いのもいっぱい、それなりにやって」いるから「自分が入っていく隙間なんかもないんだろうな、みたいな感じだった」と言う。
しかし、ブランクのあいだに「がむしゃら」より「80パーセントくらい」のほうがうまく回ることに気づいたらしい。
たしかに、その気づきも再ブレイクにつながったのだろうが、家族愛を売りにできるようになったのも大きいのではないか。
自分の妻を「ママ」と呼び、その日常的な失敗談を面白おかしく語る。それを「ママ」が別のところでMCやレポーターにツッコまれたりする。いわば、離れていても夫婦漫才ができてしまう構図だ。
こうした芸風には一定の需要があり、渡辺徹と榊原郁恵などもそれを活用してきた。離婚したとはいえ、明石家さんまと大竹しのぶもそんな感じだ。若手はあまり、この芸風をあからさまにやらないので、ベテランにはおいしかったりもする。
なお『うたコン』の翌日には、伊代が『徹子の部屋』に出ていた。ヒロミの弱点を暴露したりしつつ、同期デビューで仲のよい早見優について「仕事でもよく一緒になったり」と発言。5年前の線路立ち入り事件を思い出したが、天然キャラの彼女はそこまで深くは考えない。今後もヒロミにネタを供給し続けてくれるだろう。
実は1月に伊代も『うたコン』に出ていた。年末には『紅白』で夫婦共演、というのもありえなくはない。復活後のヒロミは「隙間」どころか最も安定した居場所を見つけたみたいだ。
宝泉薫(ほうせん・かおる)/アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)
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