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格差を語る人なら絶対押さえたい「共感」の要点 「資本主義」自体を否定してもしょうがない

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今や労働者と資本家という2つの階級に分けることが難しくなっている(写真:bee/PIXTA)
格差って、ダメなの? それとも必然か!
どういう原因で生じてくるのか、どういう格差が問題なのか?
どういう条件の下でだったら、どの程度の格差は許容できるのか?
そして、正義の基準とは?
いまや避けて通れない格差問題。近年、重要な学問のキーワードになりつつある「共感」とはなにか、を軸に、最近刊行されたばかりの『〈学問〉の取扱説明書』改訂第二版に沿って、議論の道筋を、整理してみましょう。現代思想の紹介や丁寧なテクスト分析でも定評のある仲正昌樹氏が、大学4年生(♂)と博士課程に在籍する自称“高学歴ワーキングプア”(♀)の質問に答える問答形式で、学問の基本やそのツボを伝授します。
前回:格差を語る人に必ず知ってほしいマルクスの思想(4月22日配信)

格差社会に「共感」できるか!?

:「共感」しないと、そもそも社会的正義についての議論がはじまらないのでは?

仲正昌樹(以下、仲正):「社会的正義」について議論する以上、その原点に「共感」があるのではないか、という議論はそのとおりだと思います。ロールズは「無知のヴェール」の下での選択においては、自己チューな選択と、社会的公正について各人が何となく抱いている「正義感覚」が一致すると考えました。無知のヴェールの下で「社会的に最も不利な立場にある私」の視点から考えるというのは、「共感」論であるとも言えます。

アダム・スミスも『道徳感情論』(1759年)において、市民社会の中での道徳の基礎として、苦しんでいる人たちに対する「共感」を設定しています。ちょっとだけ説明しておくと、スミスは人間にはもともと、他者の立場に我が身を置いて共感する能力があるけれど、市民社会の中での多様な経験を通して、いろいろな人の立場に立って公平=非党派的に(impartially)考えることができる能力が培われていく、という議論をしています。

最初はどうしても、自分にとって共感しやすい人への共感に偏っている(partial)けれど、様々な立場を経るうちに、次第に公平になっていくというわけですね。井上達夫さんや宮台真司さんが、リベラリズムの正義論の基礎だとしている「立場の入れ替え可能性(互換性)」、つまり「その(苦しんでいる)人と立場を交換したとして、あなたはそれに耐えられるか?」という可能性の考察も、スミス流の「共感」論の延長線上にあるのではないかと思います。

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【「共感」を議論の出発点に置いてしまうことは問題?】

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