10日発表の10月の米国消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比6.2%と31年ぶりの歴史的高水準となった。インフレ長期化の懸念から、米国の金利は上昇し株価も下落したが、いずれも大幅ではない。市場が中長期では低成長、低金利を予想しているからだろう。ただ、この先数カ月は、FRB(米連邦準備制度理事会)は難しい舵取りを迫られる。
物価上昇は多くの品目に広がり、人手不足から賃金も上昇している。
米国経済が専門のみずほリサーチ&テクノロジーズのプリンシパル・小野亮氏が注目するのが、人々の賃金上昇期待の高まりだ。ニューヨーク連邦準備銀行が公表する期待賃金上昇率は、コロナ禍前には3%が天井だったが、足元で3.3%に乗った。「米国のインフレを加速させない均衡賃金上昇率は3.2%。これを超えると物価と賃金のスパイラル的上昇のおそれが出てくる」(小野氏)。
コロナ下の特異な現象
ただ、米国経済の現状は特異で複雑だ。シェールオイル生産もあって米国のインフレの主因はエネルギーではない。背景を見てみる。
1つは夏以降もデルタ株感染が収まらず、サービス消費が期待どおりに回復せず、代替として財(モノ)需要が急増したことだ。財消費では、回復の遅れる欧州や日本と異なり、コロナ禍前のトレンドを大きく上回る。前出の小野氏は「消費における財とサービスの比率に歪みが生じたことで、財の超過需要は年換算で9000億ドルに上る」と分析している。
輸入活況で西海岸ではコンテナがあふれ、陸揚げできない状態が続く。バイデン大統領はフル稼働を呼びかけ、カリフォルニア州もコンテナ置き場の確保を急ぐが、まだ数カ月はかかりそうだ。
そして、2つ目の大きな問題として人手不足がある。若年層はコロナの流行が一服すれば職場復帰が期待できるが、より深刻なのは手厚い失業給付をやめた後も大量の退職者が戻ってこないことだ。株高で年金が増えたこともあって、高齢者が早めの退職を受け入れているという。これはリーマンショック後に多くの人が負債を抱えて職を求めていたのとは対照的だ。
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