世は政治の季節だ。自民党総裁選挙を終え、10月末以降には衆議院選挙がやってくる。
本来なら、新型コロナウイルス対策で膨張した財政をいかに正常化させていくかが問われる局面だ。ワクチン接種率は高まり、治療薬の本格化も近い。医療提供体制の改善に向けた財政支出は必要だが、それは何兆円という規模ではない。永田町で叫ばれるような大型特別給付金や数十兆円の経済対策といったフェーズではないはずだ。
厄介なのはスケジュールである。衆院選後の政権は、年末の閣議決定に向けて早急に来年度予算案を策定する必要がある。「選挙で国民の信任を得た」として膨張したままの予算をまとめかねない。そのため財政のあり方については、衆院選前に徹底して議論を戦わせる必要がある。
本コラムでは、最も過激な財政拡大論である「PB(基礎的財政収支)規律の凍結」(高市早苗元総務相や立憲民主党などが主張)について考えてみよう。
PB規律は小泉純一郎政権時代に財政再建のための穏当な目標として始まった。具体的には、公的債務残高そのものを減らすのではなく、同残高の対GDP(国内総生産)比が発散することを防ぐため、「今年の政策経費は今年の税収で賄うこと(PBの黒字化)」を目標とした。そのために小泉政権は、成長戦略や財政支出の削減を優先し、それらを実施してもなおPB黒字化が難しい場合は増税もやむなしという方針を示した。
こうした取り組みは、10%への消費税引き上げを挟みつつ現在も続く。足元の状況を確認するために年に2回、内閣府は「中長期の経済財政に関する試算」を公表している。そこでは、現在の政策を続けるとPBはいつ頃黒字化するのかが示される。仮に黒字化が難しいと示されれば、政治は増税を検討すべしというサインになる。
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