欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁はもともと弁護士で、経済学者でも中央銀行出身でもない。だが、フランスの閣僚や国際通貨基金(IMF)専務理事を歴任しただけあって、評判どおりの卓越した調整能力を発揮しているようだ。
「これはテーパリング(量的緩和の規模縮小)ではない」。9月9日のECB理事会の決定について総裁はそう説明した。この日、ECBはコロナ対策として実施してきたパンデミック緊急債券買い取り政策(PEPP)について、10〜12月は4〜9月よりも「やや低いペース」に変更すると全会一致で決めた。債券購入の減額というと、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内開始予定のテーパリングのように聞こえるが、同総裁はそれを否定し、政策の「微調整」だと強調している。
そもそもPEPPは大枠(現在1兆8500億ユーロ)の中で柔軟に購入額を調整する仕組みで、今年3月には買い取りペースを上げる決定をしていた。今回は大枠を変えずにペースをやや落とすだけであり、継続的な買い入れペースの縮小を意味するテーパリングとは違うというわけだ。
こうした玉虫色的な決定と説明は、理事会において金融緩和の縮小に前向きな“タカ派”と、慎重な“ハト派”の双方を納得させる絶妙な落としどころといえる。市場も落ち着いた反応を見せている。
ただ、総裁が会見で着ていたピンク色の服のように明るさを増すECBの景気認識が、今回の決定につながったのは確かだ。「ユーロ圏の経済回復はますます進展している。生産額は年末までにコロナ前を超える見込み。成人の70%以上がワクチンを完全接種し、消費者は支出を増やしている」。会見冒頭からトーンは高めだった。
この記事は会員限定です
残り 815文字
