[Profile] もたに・ゆかり 経営エッセイスト。1963年生まれ。東京大学経済学部卒業後、金融機関に勤務。MBA取得、外資系メーカー2社勤務を経て起業。2018年に会社を事業譲渡、現在は巴創業塾を主宰し「地方移住×起業×事業承継」についての執筆と講演を行う。
本書は東京から長野に移住した経営エッセイストで、「地方移住×起業×事業承継」を支援する巴創業塾の藻谷ゆかり氏による、「六方よし経営」の勧めである。
「六方よし」とは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の「三方よし」に、「作り手よし、地球よし、未来よし」を加えた新たな経営理念である。これは、元国連職員の田瀬和夫氏により、SDGs(持続可能な開発目標)時代の理念として提唱されたものである。
本書は、日本でその理念をすでに実践している事例を研究し、「六方よし経営」実現のための具体的なプロセスを明確にするものだ。
まず、「三方よし」では、取引を行う者が、「自分の利益追求だけでなく社会にも貢献する」。売り手と買い手、「二方」の利益に「世間よし」というCSR(企業の社会的責任)的な側面が加わっている。
これに新しく3つの「よし」を加えたのが「六方よし」だ。経済のグローバル化によりサプライチェーンが複雑化すると同時に、大量生産・消費が地球環境の悪化を招き、人類の存続をも脅かす。そんな今、「三方よし」を「六方よし」に拡張すべきだと著者はいう。
「作り手よし」は取引先やその子会社の従業員まで含めたすべての作り手への配慮、「地球よし」は地球環境への配慮、そして「未来よし」は地球や人類の未来への配慮である。現代の企業経営においては、「六方」すべてへの目配りが求められる。
なお、本書の「六方よし」の対象に株主は入っていない。企業数の96.3%を同族企業が占める日本では、ほとんどの場合、「経営者=株主」。つまり、短期的な利益を追求する株主への配慮は必要なく、長期的な視点から経営を考えられる。逆にいうと、本書の「六方よし経営」は日本でこそ実践しやすい手法なのだ。
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