[Profile]やすだ・こういち 1964年生まれ。産湯は伊東温泉(静岡県)。週刊誌記者を経てノンフィクションライターに。かない・まき1974年生まれ。テレビ番組の構成作家などを経て2015年から文筆家・イラストレーター。
異質なものを掛け合わせると新しい何かが生まれることがある。「いちご大福」はその好例だ。では「戦争」と「バスタオル」はどうか。この異質な言葉を掛け合わせた先に現れるものは何だろう。
著者の安田浩一は長年、差別の現場を取材し、「ヘイトスピーチ」という言葉を世に広めるきっかけをつくった硬派のジャーナリスト。金井真紀は、抜群の観察力とユニークな視点で世界の多様性を伝えてきた文筆家・イラストレーター。一見、対照的な2人だが、実は大の「風呂好き」という共通点があった。
ときどき待ち合わせて銭湯に行き、湯上がりにビールを飲む。そんな「銭湯友だち」の2人が「風呂旅」に出た。旅先で風呂につかりその土地の人と社会、歴史を見つめると、湯けむりの向こうには、思わぬ光景が立ち現れる。それは、私たちが目を背けてしまいがちな、加害者としての日本の姿だった。
世間では分断を煽(あお)り、歴史を捻(ね)じ曲げる本が売れている。ならば、そんな風潮に対抗する本を作ろうと盛り上がり、出来上がったのが本書だ。
最初に訪れたのはタイ。かつての「泰緬(たいめん)鉄道」に揺られ、2人はまず、中部の街カンチャナブリーに向かった。泰緬鉄道とはインド侵攻作戦のために日本軍が敷設した鉄道だ。
過酷な工事や日本兵による虐待などで約1万2000人の捕虜と数万人(実数不明)のアジア人労働者の命が失われた歴史があり、「死の鉄道」と呼ばれることが多い。折しもタイではこの「死の鉄道」をユネスコ世界文化遺産に登録する動きが本格化していた。
そして、カンチャナブリーからバスで約3時間のヒンダット温泉は、日本軍が保養地として整備した温泉だ。ジャングルの濃い緑の中、渓流沿いの露天風呂につかり、2人は現地の人々と言葉を交わす。
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