昨年から中国政府が民間企業への規制を強め、アリババグループをはじめとする巨大プラットフォーマーたちの成長が危ぶまれている。米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に対抗する企業を育てなければならない一方で、国営企業にも十分配慮する必要があるというジレンマを抱える中国ならではの規制政策といえよう。
「中国はやはり経済的にも特殊な環境であり、日本企業が学べることは限られている」。こう感じた読者も少なくないはずだ。
しかし、特殊な環境だからこそ学べることは多い。その究極の姿が、科学と人類の発展を支えてきた実験室実験である。
外部のノイズを完全に遮断する実験室があれば、「何をすれば、何が起こるか」という因果関係を検証できる。ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士は、カミオカンデという巨大な実験室をつくってニュートリノを観測した。
われわれは、自然にはありえない実験環境を人為的につくり出し、科学知を蓄積することに成功してきた。社会科学よりも自然科学が発達しているのは、この環境が整えやすいからだ。
ひるがえって、現代の中国の社会経済をみると、天然に生まれたビジネスの実験室のようなものである。AI(人工知能)とインターネットの時代においてスタートアップ企業を育てるのに理想的な環境であり、人類最速ともいえる速さでビジネスモデルを生み出す条件が整っているからだ。いわば国土全体を覆うカミオカンデである。
第1に、市場規模が半端ではない。中国の人口は約14億人であり、経済の自由化によって生み出される事業機会は、ほかの国や市場とは比べものにならない。さらに政府による保護政策が加味されるため、外国企業の市場参入を制限できる。
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