自動車用鋼材をめぐるトヨタ自動車と日本製鉄のひも付き価格の交渉が「異例」ずくめの展開を見せた。
このほどトヨタは部品メーカーに対し、2021年度下期の鋼材支給価格について1トン当たり約2万円、過去10年で最大級となる約2割の引き上げを通知した。これはつまり、難航していた日鉄との上期の価格交渉が同じだけの値上げで決着したことを意味する。
両社間での鉄鋼価格は主原料の鉄鉱石と石炭の価格に連動するため、主原料が高騰しているなら大幅値上げも不思議ではない。今回の価格交渉の異例の一つは、値上げ幅が主原料価格の連動分を大きく超えたことだ。副原料となる各種金属の値上がりや物流コストの上昇、さらに高機能鋼材の付加価値など、かねて日鉄が主張してきたことが相当程度価格に反映されたものと思われる。
かつて「チャンピオン交渉」と呼ばれた両社の交渉も、近年はトヨタが圧倒的に優勢だった。それが今上期は終始、日鉄優位で交渉が進んだ。ターニングポイントとなったのは5月28日の日本鉄鋼連盟の会長会見である。
日本製鉄社長でもある橋本英二会長が「日本製鉄の個社の社長として」と断ったうえで、「国内のひも付き価格については早急に是正する必要がある」と切り出した。ここまでなら何度も語ってきた範囲だが、その後が異例だった。
このまま安い価格が続くなら「安定供給に責任を持つということができなくなる」と踏み込んだのだ。実際、日鉄はトヨタ以外の企業にも値上げに合意しない場合、供給削減も辞さないと通告した。
日鉄が異例の強硬姿勢に転じたのは、長年の課題だった国内の過剰生産能力の削減にメドが立ったため。粗鋼を造る高炉は20年に1基を休止。今年9月末に3基も止める。24年度末にもう1基止めることで国内は10基にまで減る。下工程の加工設備の削減も行っている。リストラを進めたことで、操業維持のために不・低採算の取引に甘んじる必要がなくなった。
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