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危機下で考える特例措置の意義 コロナ禍前にも貧困に陥る人はいた

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  • 藤森 克彦 日本福祉大学福祉経営学部教授・みずほ総合研究所特任研究員
日本福祉大学 福祉経営学部教授 藤森克彦(ふじもり・かつひこ)1965年生まれ。長野県出身。国際基督教大学教養学部卒業。同大学大学院行政学研究科修士課程修了。日本福祉大学にて博士号(社会福祉学)取得。2017年から現職。みずほリサーチ&テクノロジーズ主席研究員も務める。専門は社会保障政策。著書に『単身急増社会の希望』など。(撮影:尾形文繁)

2012年のロンドンオリンピックの開会式では、農村社会から産業革命を経て成熟していく英国の歴史が、歌と演劇によって表現されていた。印象に残っているのは、無数の病院のベッドが並び、患者役の子どもと看護師600人が踊る中で「NHS」の文字が浮かんだ瞬間だ。筆者は、開会式でNHSが取り上げられるとは思いもしなかった。

NHSとは、1948年に創設された英国の国営保健サービスのことである。この制度によって、英国に居住するすべての住民は、原則無料で医療サービスを受けられる。今も、英国人の大多数が、NHSを支持している。

NHSが創設される前の英国では、医療は奢侈(しゃし)品であり、実質的に所得階層によって利用できる医療に差があった。歴史的に階級社会であった英国では、NHSの創設は容易ではなかったと思われる。

議論のあるところだが、NHS創設の背景の1つに、人々が第2次世界大戦という危機を経験したことが指摘されている。平時では社会階層ごとに別々の人生を送っていた人々が、戦時下では、兵役や爆撃、食糧難などの苦難を共にした。また、労働者階級の生活の厳しさが広く社会に認識された。人々が社会問題への意識を高めたことが、戦後の社会保障制度の基盤づくりにつながったという。

今、日本も、コロナ禍という危機の中にある。とくに、自営業者や非正規労働者を中心に、これまで普通に仕事を続けてきた人が、長期的に困難な状況に置かれている。こうした中、政府は特例的な貧困対策などを実施してきた。これには、世論の後押しも大きい。

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