筆者は20年余、ジェンダーと企業をめぐる課題を取材、執筆してきた。どうしたら日本企業で女性リーダーが増えるか。この問いを繰り返し耳にしてきた。
思い出すのは大学生のときに受けた社会学の講義だ。担当教授にしつこく言われたのは、「リポートに安易に解決策を書くな」ということ。真意は「君たちが簡単に思いつくような解決策は現場ではすでに試している。そんな簡単に解決するなら深刻な問題にはなっていない」ということだ。
私が就職活動をした1996年のこと。就職に強いとされる大学の3年生で、男子学生の多くが銀行や保険会社など金融系の就職で内定を得ていた。獲得した内定先を滑り止めにしつつ、商社やメーカーなどの採用試験を受ける人もいた。が、同じ大学・同学年でも、女子学生にそんな選択肢はなかったのである。
当時の大手金融機関で女性総合職の採用は少なく、「今年は女性総合職を採らない」「男子百数十人、女子1人」なのはざらだった。同じ大学に女子学生が2割はいたから能力や専攻は理由にならない。
性差別的な採用は業界を問わず存在した。私が就職説明会に参加した不動産会社では、人事担当者が「女性は事務職です。男性は企画か営業です」と、参加した学生たちに面と向かって言った。私が「女性が営業を希望したらどうなりますか?」と質問したら、人事担当者は「女性は事務職です」と即答したのである。
その企業でペーパーテストを受けながら吐き気が込み上げてきた。能力や適性でなく性別で仕事内容を決められるのが嫌だったからだ。86年の男女雇用機会均等法施行から10年後の話である。
とはいえ、私は幸運だった。探せば男性と同じ仕事・同じ賃金の就職先もあったから。私より10歳以上年上の女性弁護士は東京大学在学中、「男子のみ」という求人票の山を見て絶望を感じ、企業就職を諦めて司法試験を受けたそうだ。日本企業が四大卒の女性を採用しないので外資系中心に試験を受けた人もいる。
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