[Profile] おおにし・やすゆき ジャーナリスト。1965年生まれ。愛知県出身。88年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、『日経ビジネス』編集委員などを経て2016年4月に独立。著書多数。
本書はさまざまな読み方ができる多面的なビジネス書である。江副浩正という希代の経営者の波乱に富んだ人生をつづった伝記として、戦後のわが国の企業がたどってきた経営史として、そしてリクルートという会社の特異なビジネスモデルの研究書として読むことができる。
江副は非常に人見知りをする性格で、創業社長にありがちないわゆる「親分肌」ではなかった。それが逆に功を奏し、自分より優秀な人間にどんどん仕事を任せることで、社内に「経営者」を増やしていった。
リクルートの精神的支柱である社訓「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」が、これを端的に表している。カリスマの「リーダーシップ」に取って代わるのは、社員の「モチベーション」だったのである。
リクルート事件の後、ダイエー創業者の中内功が同社を引き受けた。それは、上司の顔色をうかがい唯々諾々と従うだけの社員とは正反対の、自ら考えることのできる社員が欲しかったからである。
堀江貴文率いるライブドアが検察という公権力の標的となり、あっという間に解体されてしまったのは記憶に新しい。あれは日本がインターネットの世界から取り残され、「先進国」の地位から滑り落ちた分水嶺だったと考えることもできる。
同様に、リクルート事件では、マスコミや世論のルサンチマンとそれに乗じた検察権力によって、リクルートも解体の危機に瀕した。
リクルートはその後、産業再生機構やダイエーの尽力によって憂き目を免れた。今では唯一無二の日本発プラットフォーマー(GAFAに代表される、市場参加者同士を結びつけるプラットフォームを提供する企業)として、日本を代表する優良企業に成長している。
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