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『絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの』 米国が直面する悪夢 レントシーキングの罪

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絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの(アン・ケース、アンガス・ディートン 著/松本 裕 訳/みすず書房/3600円+税/352ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile] Anne Case 米プリンストン大学経済学・公共問題名誉教授。専門は医療経済学。現在は米国家科学賞大統領諮問委員などを務める。
Angus Deaton 米プリンストン大学経済学・国際問題名誉教授。南カリフォルニア大学経済学学長教授。2015年ノーベル経済学賞受賞。

われわれ人類の平均寿命は延び続け、死亡率は低下し続けている。それは、先進国と発展途上国の別なく起きている。当然、喜ぶべき事象だ。

しかし、近年、米国の大卒未満の白人の間には、この世界的な潮流とは逆の傾向が見られる。労働階層の白人たちの平均余命は短くなり、死亡率が上がっているのだ。1990年代末頃から、とくに45〜55歳の低学歴中年白人の死亡率は年々高くなっているという。ちなみに4年制大学を卒業した高学歴の白人には同様の傾向はまったく確認されていない。

著者らの調べから、彼らの死亡率を大幅に上げている原因が、オピオイドなど医療用薬物の過剰摂取による中毒事故、アルコール性肝疾患、そして自殺であることが判明する。これらは自らが招いた死、それも人生に絶望した者が陥る死だ。著者らはこれを「絶望死」と呼ぶ。

いま、低学歴白人が経験しているのは、労働環境の崩壊、貧困、コミュニティーの破壊、宗教の衰退だ。これらの多くはグローバル化がもたらしたものだ。しかし一方で、同じ重圧を受けているほかの富裕国の労働者の間では絶望死は微増に留(とど)まっている。

この差は何か。著者らはまず、米国の医療制度の闇、とくに他国と比べて異常に高い医療費と保険制度を挙げる。そしてこの問題の原因になっている、米国の経済システムに巣食うレントシーキング(民間企業などが政治家や官僚に働きかけ、都合よく規制を課す、または緩和させようとすること)による不公正な富の分配の結果だと喝破する。

ここで留意しなければいけないのは、著者らはグローバル経済や資本主義、そして貧富の格差を必ずしも問題とはしていないことだ。あくまでもレントシーキングによる不公正な富の分配が問題の本質だとしている。貧困のみでは絶望死のエピデミックは必ずしも起きないのだ。

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