最悪レベルの重大事故を起こした東京電力・福島第一原子力発電所では、燃料デブリ(メルトダウンを起こした原子炉の溶融燃料)を冷やすために用いた水が建屋に流入する地下水と混じり合って、大量の放射性物質を含んだ汚染水が発生し続けている。
汚染水については、ALPS(多核種除去設備)と呼ばれる装置でセシウムやストロンチウムなど62の放射性核種の大部分を取り除けるというものの、通常の水と性質の似たトリチウム(三重水素)は除去できない。このALPS処理水の扱いが、原発事故から間もなく10年を迎えようとする現在、大きな問題となっている。
ALPS処理水を貯蔵するタンクは10月22日現在、958基に上る。このままでは使用済み燃料や燃料デブリ取り出しなどの廃炉作業に支障が出るとして、国や東電はタンクのスペースを間もなく増やせなくなると説明する。そこで経済産業省は有識者委員会を設置。「現実的な選択肢」として提案されたのが、ALPS処理水を希釈して海洋に放出する方法だ。この海洋放出について、国は近く方針を決定するとみられている。
深刻な1次産業への影響
だが、問題は簡単ではない。
とくに農林水産業関係者の反対が根強い。全国漁業協同組合連合会の岸宏会長は国による意見聴取の場で「絶対反対」を表明。ALPS処理水を海洋放出することになれば「(福島県のみならず)日本の漁業は壊滅的な影響を受ける」と危機感をあらわにした。福島県農業協同組合中央会や福島県漁業協同組合連合会、福島県森林組合連合会などの1次産業に関係する団体も海洋や大気など環境中への放出に反対の意思を示している。
経産省によるパブリックコメント募集(4月6日〜7月31日)でも、応募総数4011件のうち、ALPS処理水の安全性を懸念する意見が約2700件(重複を含む、以下同)、風評影響や復興の遅延への懸念が約1000件に上った。
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