垂秀夫氏が在中国大使に起用されると報じられたのは今年7月のこと。この人事は外務省内外で驚きをもって迎えられた。垂氏は長らく中国側から「要注意人物」と見なされていたからだ。
垂氏は中国語研修組(チャイナスクール)のキャリア外交官の中でも情報収集の手腕が突出していると評されてきた。中国での人脈は共産党幹部から民主活動家、人権活動家にまで及び、そうした人物を相互理解のために日本に招くといった仕事もしてきた。中国側が警戒対象にするのも無理はない。「この人事に中国が同意するか否かで、中国の対日関係改善の意欲を試した」という解説も出たほどだ。
「互恵」主張の基盤が弱まる
「対中強硬派」と見なされることが多い垂氏だが、立案に深く関わった「戦略的互恵関係」への思い入れは強い。日中が安全保障・外交・経済・環境などさまざまな分野で共通の利益実現を目指すという理念である。
その淵源は、2006年10月に安倍晋三首相が胡錦濤国家主席(いずれも当時)と互恵関係の構築で合意したことにさかのぼる。ここから日中関係は改善を続け、08年6月に両国は東シナ海のガス田共同開発で合意に至った。「戦略的互恵関係」の構築は軌道に乗ったかに見えた。
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