菅義偉政権が推進するデジタル改革は、そのわかりやすさから国民受けがいい。だがそれゆえに困難な部分は避ける一面的な改革に終わる可能性もある。
例えばマイナンバー改革だ。現在、官邸に設けられた「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」(以下、WG)では改善に向けた工程表の議論が進む。ここでの話題は主に国・地方のデジタル基盤構築や、生体認証導入などマイナンバーカードの機能改善だ。これが実現すると、どうなるか。
オンライン申請の使い勝手が悪かったため、マイナンバー改善への国民の関心を高めるきっかけとなった1人10万円の特別定額給付金を例に考えてみよう。機能改善後は、暗証番号も要らずスマートフォンで簡単に申請を行えることになるだろう。だが、改善はそこまでだ。依然として入金先の銀行口座情報を入力する必要があり、国民一斉の口座存否確認作業を考慮すると、海外並みの申請後即日や数日内での入金は困難だろう。
加えて欧米では、同様の番号制度を用いて所得状況に応じ必要度の高い人に集中して給付を行う体制を整えている。こうしたことは、本人認証のツールにすぎないマイナンバー“カード”の機能改善ではそもそも対応できない。
基本的な事実として、春の特別定額給付金ではマイナンバーそのものは使用されなかったことを押さえておく必要がある。マイナンバーは、公的年金や生活保護給付の支給決定など法定事務において、市民が住民票や課税証明書など必要書類の提出を省略できる制度だ。マイナンバーさえ示せば、役所側でそれら必要書類を参照できる。
濫用防止のため、マイナンバーを利用できる法定事務は法律に明記されており、それ以外では利用できない。これが今春、急きょ予算措置として決まった特別定額給付金での利用が不可だった理由だ。番号制度とは直接関係のないマイナンバーカードの本人認証機能だけが運転免許証代わりに申請時に使われたにすぎない。
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