安倍晋三前首相が表明し、菅義偉首相が引き継いだ方針の1つに、「2021年前半までに国民全員分の新型コロナウイルスワクチンの確保を目指す」というものがある。
安倍氏が辞任表明した8月28日に新型コロナ対策本部が決定したのだが、このワクチンをめぐる方針には奇妙なところがある。開発が有望視される米ファイザー、英アストラゼネカなどとワクチン供給で政府は基本合意しているというが、いずれもまだ有効性も安全性も証明されておらず、「実用化されれば」という前提条件がつく。
10月2日には厚生労働省が、国民全員に無料で接種できるよう財政措置を取り、接種勧奨を行い、国民の努力義務とする方針を打ち出した。併せて「予防接種の副反応による健康被害は不可避なため、高度な救済措置を設ける」という。
接種勧奨や努力義務は結核や水痘などの定期接種の一部と同じ扱いだ。こうした方針を取るのは、新型コロナの流行により、「国民の生命・健康等が大きなリスクにさらされており」「流行及びその長期化により、社会経済にも極めて大きな被害を及ぼしている状況にある」からだとしている。ワクチンは国際的な奪い合いが予想されるため、準備は必要だろう。
2つの相反する立場
しかし一方で、8月28日の対策本部では、新型コロナについて指定感染症としての扱いを見直す方針も決定されているのである。
新型コロナは感染症法上、結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)よりも厳格な扱いで、入院勧告や汚染された場所の消毒に加え、1類のエボラ出血熱やペスト並みに無症状病原体保有者も原則入院とされている。これについて、自宅療養を可能にするなど、措置や制限を緩和するというのである。理由は、「新たな知見等を踏まえれば、ハイリスクの『場』や、リスクの態様に応じたメリハリの効いた対策を適切に講じることによって、重症者や死亡者をできる限り抑制しつつ、社会経済活動を継続することが可能」というものだ。
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