世の中が不況に陥ると真っ先に見直される支出の代表が、マーケティング予算かもしれない。しかし過去の経験が示すのは、変化の時こそ、むしろマーケティングに力を入れないといけないということだ。
そもそもマーケティングとは「広告宣伝」のみを意味するものではない。やや難しい言い回しになるが、マーケティングのすべてを言い表す表現は「価値の交換をデザインすること」である。すなわち、市場を定義し、価値を定義し、価値をつくり出し、そして価値を伝えること。商品やサービスが売れるのは、顧客が価値を感じるからである。
しかし、天変地異や不況は人々の価値観を大きく変えてしまう。顧客が何に価値を感じるかが変わってしまえば、企業は新しい価値を定義し、つくり出し、それを伝えていかなくてはいけない。今売れている商品が、アフターコロナの世界でも同じように売れ続ける保証はまったくない。
これから多くの企業活動は大きな価値観の変化に見舞われるだろう。「耐え忍んだ後にV字回復しよう」という論調も目立つが、このショックは一過性のものではない。例えばインバウンド消費に頼ってきたビジネスは、業界構造自体が破壊されてしまうおそれがある。旅行会社は、「ランオペ」と呼ばれる手配会社やバス会社、広告会社などさまざまな中小企業に仕事を発注している。長い時間をかけて出来上がったそうした業界の裾野が壊れ始めており、被害は文字どおり壊滅的だ。V字回復は現実的ではない。
オーガニックが人気に
こうした打撃は企業倒産などの形で目に見えるのでわかりやすい。政府からの補助なども期待できるだろう。ビジネスにとってより警戒が必要なのは「消費者の価値観の変化」だ。
コンサルティング会社のBCGが3月23日に発表したリポートによると、コロナの影響で生活スタイルを変えたという人の割合は、調査対象中最も低い英国でも53%いた。ちなみにこの調査が行われたのは、ジョンソン首相が「3人以上の集会禁止」を発表する前のこと。最高のイタリアでは実に90%に及ぶ。
この記事は有料会員限定です
残り 629文字
