つい最近までは、主要国における金融緩和の流れは一巡したとみる向きが優勢だった。しかし、新型肺炎が経済・市場に与える影響への対応で、3月3日にFRB(米連邦準備制度理事会)が0.5%の大幅な政策金利引き下げに踏み切ると、世界は再び金融緩和モードへと戻ってしまった。
金融市場は3月17.18日に予定されている次回FOMC(米連邦公開市場委員会)での0.25〜0.5%の利下げを事前に織り込んでいたが、こうした市場の期待に先手を打つ形で、大幅な緊急利下げが実施された。まさにサプライズ戦略である。
ところが、当日の米国株価は大幅に下落し、サプライズ戦略は裏目に出てしまった感がある。「新型肺炎による影響はそれほどまでに深刻なのか」といった市場の疑心暗鬼をむしろ強めてしまったのである。
150年間ない低金利
さらに、大幅利下げによって米国の政策金利がゼロ近傍まで接近することが、にわかに視野に入ってきて、市場に先行きの政策の手詰まり感を意識させた。
緊急利下げを受けて、ベンチマークとなる米10年国債利回りは、1.0%を下回った。ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー米イェール大学教授の研究によると、1871年までさかのぼっても米国で10年国債利回りが1%を下回ったことはなかったという。少なくとも過去150年間では経験のない、歴史的な低水準なのである。
2008年のリーマンショックのときには、FRBは政策金利を0.25%まで引き下げた。しかし、FRBがその水準を7年間程度維持する中でも、10年国債利回りは1.5%程度までしか低下しなかった。
当時はFRBの金融緩和の効果によって経済はいずれ改善し、それに合わせて政策金利も相応に引き上げられていく、との市場の期待があった。そのため、10年国債利回りの低下は1.5%程度で止まったのである。実際、18年には、政策金利は2.25〜2.5%まで引き上げられた。
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