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『昔は面白かったな 回想の文壇交友録』 文壇を回顧する超高齢対談、見え隠れする死の影

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昔は面白かったな 回想の文壇交友録(石原慎太郎、坂本忠雄 著/新潮新書/720円+税/186ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile] いしはら・しんたろう 1932年生まれ。作家。環境庁長官や運輸相を歴任後、東京都知事を4期務めた。全集に『石原慎太郎の文学』など。
さかもと・ただお 1935年生まれ。慶応大学卒業。元『新潮』編集長。石原氏ら多くの作家を担当。著書に『小林秀雄と河上徹太郎』など。

「昔よ、もう一度」とノスタルジーに浸っていては、革新は生まれない。過去よりも未来を知りたいという意見も、もっともだ。だが、1930年代生まれ、卒寿に近い方々に「思い出に浸るな」というのは酷だろう。むしろ、人生100年時代が現実になりつつある今、回顧に回顧を重ねる本書は「超高齢者による高齢者向けの書籍」という新たなジャンルを拓(ひら)く一冊になるかもしれない。

芥川賞を受け、時代の寵児になり、東京都知事も務めた作家の石原慎太郎氏と、同時代を生きた文芸編集者である坂本忠雄氏。対談形式で、昭和の文壇、戦後社会などについて語り合う。

三島由紀夫、川端康成、小林秀雄、大岡昇平など大御所の秘話が次から次に明かされるのが読みどころの1つだ。

例えば、ノーベル賞作家の川端康成と、石原氏のよき理解者だった三島由紀夫の関係が興味深い。川端は三島の切腹の現場で生首を見てから、時々家で、「三島君が来たよ、扉を開けてあげなさい」などと訳のわからないことを言うようになって、最後は自殺してしまったとか。その川端は生前、石原氏に「あ、三島君はダメです。あの人には絶対ダメです。絶対ダメです」と唾棄するように三島の作品を否定し、石原はそれを仲のよい三島に伝えるべきか悩んだという。

大江健三郎氏はバーで気取って石原氏のヨット仲間にフランス語で話しかけたら、相手のほうがフランス語がうまくてペラペラ返され、理解できなかったとか。大江氏は恥ずかしさのあまり、コートも忘れて足早に店を去ったというから、後のノーベル賞作家の意外な一面も知れる。

自身の作家生活も回想する。芥川賞受賞作「太陽の季節」は2晩で書き上げたが悪筆のために清書に3日かかり、編集者に「邦文和訳」と呼ばれたという。

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