年明けに米ラスベガスで開かれた世界最大のテクノロジー業界見本市「CES 2020」で最も注目されたものの1つが、ソニーの電気自動車(EV)コンセプト「VISION-S(ビジョン エス)」だった。
CMOS(シーモス)イメージセンサーやエンターテインメントシステムを車載用に売り込むためで、ソニーが完成車ビジネスに参入するわけではない。それでもコンセプトカーの完成度が、高い評価を受けた。
もちろんソニーが車をゼロから造ったわけではない。ボッシュ、コンチネンタル、ZF(いずれも独)など、メガサプライヤーと呼ばれる自動車部品大手の協力があった。とくにカナダのマグナ・インターナショナルの力が大きい。同社の子会社で自動車の製造受託事業を100年以上手がけ、トヨタ自動車のスープラ製造など多くの実績を持つマグナ・シュタイヤーがVISION-Sを造った。
「エンジン車に比べて構造が簡単なEVは、パソコンのように部品さえあれば簡単に造ることができる」「新規参入が相次ぎ、既存の自動車メーカーは駆逐される」。こうしたストーリーが、これまでまことしやかに語られてきた。しかし、一定程度の規模に成長したのは米テスラだけなのが現実だ。
IT機器では、iPhoneの製造を手がける台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業のような製造受託の専門業者が数多く存在するため、アイデアとブランドを武器に簡単に参入できる。一方、自動車の製造は、完成車メーカー自身か、その系列が主体で、製造を受託できる独立事業者はマグナなどわずかしかいない。
ゼロから自前の工場を造れば、初期投資は膨大になる。既存工場を安値で買収したとしても、1000人規模の雇用と開発費、金型投資など固定費は重い。販売価格は数百万〜1000万円超、かつ命を預ける自動車という製品では、新興メーカーが一定台数を安定的に売り続けることは難しい。
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