日本に未曾有の被害をもたらした東京電力・福島第一原子力発電所の事故から、3月11日で9年が経過する。その翌日の12日、注目すべき民事訴訟の判決が、仙台高等裁判所で予定されている。全国約30カ所で審理が進んでいる東電を相手取った集団訴訟で初となる、高裁段階での判決だ。
この判決を特別な思いで見守っている男性がいる。福島第一原発が立地する福島県双葉町出身の小川貴永さん(49)だ。原発事故で故郷を追われ、現在、福島県いわき市内の復興公営住宅で一人暮らしの身だ。妻や現在、小学生の2人の子どもとは、原発事故以来、離れ離れの生活を強いられている。
原告である小川さんは、「生活の基盤や人間関係に至るまで何もかも奪われた。裁判所には、被害の実態に見合った賠償を東電に命じてほしい」と語る。
双葉町で養蜂業と果樹園を営んでいた小川さんの畑には雑草が生い茂り、今も毎時7マイクロシーベルトもの放射線量が計測されている。自宅は雨漏りに加えて、野生動物が入り込んで異臭がひどくなり、3年前に取り壊しを余儀なくされた。
今も続く被災者の苦難
双葉町で生まれ育ち、地元の神社の氏子総代を務める小川さんは、双葉町の復興を誰にも増して強く望んでいる。しかし放射能汚染は今なお深刻で、帰還の見通しはまったく立っていない。
「そうした原発事故特有の被害の実態がきちんと捉えられていない」と、小川さんは現在の賠償制度のあり方を問題視する。
福島原発事故の賠償については、国の設置した審査会が「中間指針」を定めている。東電は同指針に基づき、避難慰謝料や財物賠償などの支払いを続けてきた。
だが、「月10万円と決められた避難慰謝料は、地域そのものが失われ、人生のすべてが丸ごと奪われるという前代未聞の事態に対するものとはいえない」(原告弁護団幹事長の米倉勉弁護士)。
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