コンクールでの優勝やアルバムのヒットなど、音楽家が世に出るきっかけはさまざまだ。20世紀のクラシック界では「ショパン国際ピアノ・コンクール」での優勝によってその存在を世に知らしめたマルタ・アルゲリッチ(1941~)やマウリツィオ・ポリーニ(1942~)。そして、今や伝説の名盤となったJ・S・バッハの『ゴールドベルク変奏曲』を引っ提げてデビューを果たしたピアニスト、グレン・グールド(1932~82)などがその代表例だ。その後の精進がさらに重要なことはもちろんだが、輝かしい未来を見据える若き音楽家たちの多くが、このようなチャンスを求めて日夜努力を重ねている。
一方、大御所の強力な後押しによって世に出る幸運なアーティストも存在する。20世紀では、“楽壇の帝王”とうたわれたヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~89)によって見いだされたバイオリニスト、アンネ=ゾフィー・ムター(1963~)がその筆頭だろう。13歳のときに、カラヤンに招かれてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と初共演を果たしたムターは、15歳にしてモーツァルトの『バイオリン協奏曲集』を同楽団と録音。輝かしいデビュー盤となったこのアルバムは一世を風靡(ふうび)し、「天才少女現る!」のニュースが世界中を駆け巡ったことが思い出される。幼いムターの気丈な姿と、その彼女を慈しむように見つめるカラヤンを写したアルバムジャケットは、今見てもほほ笑ましい。
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