「わが家にも、天然ガスが来ることになったのよ」
筆者が小学生だった時分、都市ガスの原料が天然ガスに切り替わると母親が喜んでいた記憶が、頭の片隅に残っている。当時、詳しい理由は知らなかったが、LNG(液化天然ガス)の輸入開始から50年の節目に、天然ガスの歴史を調べてみて、公害問題克服への働きやエネルギー安定供給をはじめとした功績の大きさに驚いた。
天然ガスには、優れた特長がいくつもある。①石炭や石油を原料として製造された都市ガスと比べて熱量が2倍以上で、輸送効率が高い、②ガス中毒の原因となる一酸化炭素が含まれておらず危険性が小さい、③大気汚染物質である硫黄酸化物が製造時に取り除かれており、窒素酸化物は燃焼時の排出量が少ない、④燃焼時の二酸化炭素排出量は石炭の約半分にとどまる、といったものだ。
ただし、導入には大きな困難があった。大量の天然ガスを気体のまま需要地に送るにはパイプライン(輸送導管)の敷設が必要だが、島国で産地から離れた日本にとって、建設自体が難しかった。そうした問題を解決したのが、天然ガスを零下162度の超低温にすることで液化したLNGだ。液化によって体積が約600分の1に縮まり、大量輸送が可能になった。技術自体は欧米で生まれたが、社会に定着させたのは日本だ。
導入で何が変わったか
1969年11月、東京ガスの根岸工場(神奈川県横浜市)に、米アラスカ産のLNGを積んだ専用船が到着、日本で初のLNG輸入が実現した。都市ガスの原料や、隣接地に建設された東京電力(現JERA(ジェラ))の南横浜火力発電所での発電用燃料として使用された。
LNGの導入は、日本のエネルギー構造を大きく変えた。石油ショックが起きた73年度、日本では国内に供給される1次エネルギーの75%は石油だったが、2017年度には39%まで低下した。エネルギー源の多様化に取り組んだ結果で、牽引役はLNG。LNGを中心とする天然ガスは73年度の1%から17年度には23%に拡大した。また、石油はほとんどが中東からの輸入であるのに対し、LNGの輸入先は18カ国で、中東依存度は約2割にとどまる。
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