金融安定理事会(FSB)は金融システムの安定化を協議する国際的な組織だ。その傘下の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、投資家・企業それぞれに対し、気候変動によってその事業がいかなる影響を受けるのかを分析し、開示することを求めている。
しかし、そうしたシナリオ分析は、いざ具体的に着手しようとすると、すぐに難しさにぶち当たる。
台風がどの程度の暴風雨をもたらすと考えるのが適当か、どこまでの浸水を予測しておけば適当か。平常時には考えられないレベルの想定を自らの事業のマテリアリティ(重要性)として認識し、どういう対策が適切かを書けというわけである。企業としては、保守的な予測をすればするほど、より過剰な資本が必要になってしまう。
そのため、TCFDと投資家の両方のお眼鏡にかなうシナリオ分析にするには、どのあたりに着地させればよいのか、迷うのは無理からぬことに思える。
しかし、そうしたシナリオ分析こそが、企業経営のサステイナビリティの肝になることを示す事例が多発している。
最悪の事態を想定する
先般の台風19号では、首都圏でもまれに見る風雨を体験。記録的な大雨は千曲川、阿武隈川など71河川で堤防を決壊させ被害を広げた。これは企業経営にも深刻な影響をもたらす。
JR東日本を例にとると、10月は計画運休などで120億円の減収見通し。さらに北陸新幹線の車両基地が千曲川の氾濫で浸水し、車両全体の3分の1、120車両に影響が出た。廃車に1車両当たり3億円がかかるとした場合、120車両すべての廃車はそれだけで360億円の収益下振れ要因である。
しかし、国土交通省のハザードマップ上で、北陸新幹線車両基地周辺は、洪水が起こった場合の警戒程度の高いことが示されていた。物事に「タラレバ」はないが、「ハザードマップ上のリスクを捉え、輸送量の確保のための機材配備や有効的保存のあり方は適切か」をあらかじめ考えていたなら、先の360億円は減らせていたはずだ。
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