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ライフ #人が集まる街 逃げる街

工業都市からベッドタウンへ 川口市[埼玉県]

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  • 牧野 知弘 不動産事業プロデューサー

川口市は埼玉県の南東部に位置する、人口約60万人の中核市である。市の南には荒川が流れ、川を挟んで東京都の北区と、東部で足立区と接する。街の中心はJR京浜東北線「川口」駅周辺だ。川口駅は1日平均乗降客数が16万8000人を数え、駅前には百貨店のそごうやスーパー、専門店、学習塾などが集積する。

この街は江戸時代、日光街道の脇街道である日光御成道が通り、川口宿や鳩ヶ谷宿などの宿場町が発展してきた。また農閑期を利用した鋳物作りが盛んで、鍋、釜などの日用品を製造し、豊かな水運を利用して大消費地である江戸に運んでいた。江戸時代末期には、幕府などからの発注で、大砲や砲弾の製造も行われるようになった。

第2次世界大戦後も、鋳物を中心とした工業都市として高度経済成長期を通じて発展した様子は、吉永小百合が主演した1962年の日活映画『キューポラのある街』でうかがい知ることができる。キューポラとはコークスの燃焼熱によって鉄を溶かし、鋳物の原材料とするためのシャフト型の溶解炉のことをいう。当時、炉の高さが数十メートルにも及ぶ末広がりの円筒状のキューポラが川口の街中に林立し、一種不思議な景観を形成していたため、「キューポラのある街」と称されたのだ。64年東京五輪が開催された際、旧国立競技場に設置された聖火台は川口の鋳物工場で製造されたもので、川口の鋳物は世界にその名をはせていたのである。

だが、鋳物工場の多くは従業員30人未満の中小工場で、川口に東京に通勤する人口が徐々に増える中、地盤沈下や騒音の原因となる鋳物工場は移転を余儀なくされ、街の様子は次第に変容していく。

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