京都・奈良、と並び称されるように、私たち日本人の多くが修学旅行などで一度は訪れる観光地が奈良だ。奈良には東大寺、唐招提寺、薬師寺など日本を代表する神社仏閣があり、興福寺の五重塔や、東大寺の大仏は日本人の多くが一度は拝んでいるだろう。
ところが、この代表的な古都である奈良と京都は、観光業の面では大きな差がある。例えばホテルマーケットでみると、客室数は京都府が2万5720室(都道府県別12位)であるのに対して奈良は県全体で3860室。全都道府県中46位である(2017年)。
私は以前、京都とともにこの奈良にあるホテルの運営を行っていたことがあり、2つの古都の間を頻繁に行き来した。京都の中心部から奈良に向かうには近鉄かJRの奈良線を利用するのだが、たっぷり1時間はかかった。京都の町並みを抜けると、車窓の外には延々と田園風景が続き、とくに春先や晩秋などは本当にきれいな風景に見とれてしまい、奈良に到着する頃には心はすっかり旅気分になっていたものだ。だが意外とかかる時間は、観光のうえではネックである。
また、ビジネス客でも観光客でも、食事は旅の楽しみの1つだろう。ところが奈良に泊まるとなると、とくにJR奈良駅周辺にはほとんどお店がなく、午後8時を過ぎると大半の店がシャッターを下ろしてしまう。おまけに、奈良と聞いても名物料理が思い浮かばない。奈良漬は有名だが、それだけでは料理としては心もとない。先斗(ぽんと)町や祇園など華やかな京都の夜に比べて奈良は夜の楽しさもなく、仕事もそこそこに京都に戻るのが当時の私の出張だった。
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