[Profile] Zeeya Merali/フリージャーナリスト。英ケンブリッジ大学で修士課程まで理論物理学を学び、その後、米ブラウン大学で宇宙論の博士号を取得。現在は『ニュー・サイエンティスト』『ネイチャー』『サイエンティフィック・アメリカン』などに寄稿している。
かつてノーベル賞物理学者のリチャード・ファインマンはこう言った。「自分で作れないものを、私は理解していない」。
このようなDIY精神こそが、世の中のイノベーションを加速させてきたことは言うまでもないだろう。情報科学しかり、ゲノム科学しかり。しかしこの潮流が、宇宙科学の領域にまで及んでいるとは知らなかった。
実験室で宇宙を作る。そんなことが、理論的には実現可能と言えるところまで来ているというのだ。本書はこのような構想が成立するまでの科学者たちの足取りを追いかけながら、宇宙科学の最前線を紹介した一冊である。
実験のコアとなる理論は、多くの科学者のバトンリレーによって改良されてきたインフレーション理論だ。
どこで、どうやるかはともかくとして、わずか25グラムほどの「偽の真空」が得られれば、実験室の中でインフレーションを起こさせることにより、立派な「宇宙」が誕生するという。
この「偽の真空」に相当すると目されているのが、磁気単極子という物質だ。これはN極、S極の一方だけを持つ孤立した粒子なのだが、いまだ見つかってはいない。しかし裏を返せば、これさえ見つかれば、磁気単極子はまさに宇宙の種となり、粒子加速器の中で新たな宇宙が誕生するのだ。そして、そのカギを握っているのが日本の科学者であるというから、胸も熱くなる。
ところで、一般的に科学的であるとは「なぜ?」を追究することだと思われがちだが、このスタンスは分野によっては厄介な問題を引き起こす。
とくに宇宙科学の領域において「なぜ宇宙は誕生したのか?」「なぜビッグバンが起きたのか?」を突き詰めていくと、科学では扱えない問題へと容易に転じていく。
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