[Profile]まるやま・ごんざれす ジャーナリスト・編集者。1977年宮城県生まれ。著書に『アジア「罰当たり」旅行』(彩図社)、『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』(講談社)などがある。人気テレビ番組「クレイジージャーニー」(TBS系)に「危険地帯ジャーナリスト」として出演中。
TBS系テレビ番組「クレイジージャーニー」に出演しているジャーナリスト、丸山ゴンザレスの著書だ。番組をご覧になった方ならばご存じかもしれないが、著者はさまざまな国の裏社会を取材してきた人物だ。
本書は著者が取材した殺し屋や売春婦、ドラッグディーラーやジャンキーなどといった裏社会に生きる人々が、何を考えて犯罪という道を選び、行動するのかを考察した1冊である。著者自身が言及しているように、「思想」といっても体系だったイデオロギーのようなものではなく、犯罪者の思考を読み解くことに重点が置かれている。
本書は第1章から強烈だ。取材対象はジャマイカの首都にあるスラムに暮らす「現役の殺し屋」だ。現れたのは貧相な体格に暗く沈んだ目をした青年。取材を続けている最中に殺し屋の携帯電話が鳴る。相手はクライアント。なんと用件は殺しの依頼だ。しかも動機が「自分を振った女を殺してほしい」という、それだけだ。著者は衝撃を受ける。そんな理由で女を殺す? 戸惑う著者に殺し屋の青年は言う。「仕事だからな。俺の気持ちは関係ない」と。
このやり取りから著者は殺し屋本人よりも「依頼者」に恐怖心を持ち関心が向く。
どんなに恨みを持っても、自分が手を汚す場合、準備期間や計画を立てる段階で次第に冷静さを取り戻し殺意が急速に冷める。とくに短時間で抱いた怒りは冷めるのも早い。しかし、殺し屋を雇うことのできるコネと金がある者は、恨みのゲージが満タンのまま電話1本で殺しが実行できてしまう。人は状況次第で簡単に殺しのボタンを押すことができてしまうのだ。
ここから著者は命と金について、在留邦人が最も多く殺されている国、フィリピンでの取材経験を元に深く掘り下げていく。詳しくは本書に譲るが、結論から言えば、人の命に値段はつけられるということだ。経済状況、法律、国家権力の強弱、行政機構の腐敗の度合い。それらの微妙なバランスの上で、命の値段は決まってしまう。善悪ではなくそれが現実なのだ。
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