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『真実の終わり』 米国きっての書評家が警告する民主主義の危機

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真実の終わり(ミチコ・カクタニ 著/岡崎玲子 訳/集英社1700円+税/172ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[著者プロフィル]Michiko Kakutani/文芸評論家。日系米国人2世。1976年米イェール大学卒業。ニューヨーク・タイムズ紙で30年以上にわたり書評を担当。鋭い文芸批評で文学界に多大な影響を及ぼす。98年にピューリッツァー賞(批評部門)受賞。2017年に退社。

ミチコ・カクタニをご存じだろうか。本を愛する者にとって彼女はまさに「雲の上の人」だ。1955年生まれの日系米国人2世で、ニューヨーク・タイムズ紙で34年間にわたり書評を担当した。辛口の書評で知られ、98年にはピューリッツァー賞(批評部門)も受賞している。英語圏で最も影響力のある書評家だ。

本書は、彼女が2017年に会社を退職して初めて世に問うた著作である。意外なことにそれは文芸批評ではなかった。トランプ政権の誕生以後、民主主義が危機に瀕する米国社会を鋭く分析した渾身の一冊だったのだ。

トランプ大統領の登場をきっかけに世界は明らかに変わった。フェイクニュースやプロパガンダがはびこり、真実を追究する姿勢はないがしろにされるようになった。ヘイトスピーチが主流化し、人々は異なる政治的立場を超えて対話する術(すべ)を見失ってしまった。なぜこのような事態が引き起こされたのか。なぜ真実や理性は絶滅危惧種となってしまったのか──。カクタニは本書でその原因を明らかにしている。彼女の指摘は驚くべきものだ。米国社会が直面する困難を生み出したのは「ポストモダニズム」だというのである。

ポストモダニズムは、60年代後半から80年代にかけて世界を席巻した思想的潮流だ。普遍的な価値の存在や人間の理性、社会の進歩などを信奉するモダニズム(近代主義)を批判し、乗り越えようとする思想運動で、建築や美術、文学、哲学などさまざまな分野に多大な影響を及ぼした。

ポストモダニズムの考え方を簡単にまとめれば次のようになる。「私たちの認識は、時代や階級、性別や人種の違いにより制約を受けている。それらのバイアスから自由な客観的な真理など存在しない」。モダニズムに潜む西洋文化中心主義を暴き、あらゆる文化に優劣はなく、すべては等価だと教えてくれたのがポストモダニズムだった。

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