【著者プロフィル】Massimo Pigliucci/米ニューヨーク市立大学の哲学教授。ローマ出身。イタリアのフェラーラ大学で遺伝学、米国のコネチカット大学で生物学、テネシー大学で哲学の博士号を取得。ほかの著書に『Answers for Aristotle(アリストテレスへの答え)』など。
「ストア派」は、紀元前5世紀のソクラテスの思想から派生したヘレニズム哲学の一派で、紀元前3世紀初頭にキプロス島出身のゼノンが創始した。「ストア哲学」ともいう。
ストアという名は哲学者のゼノンが、古代ギリシャの都市アテナイの列柱廊(ストア・ポイキレ)で自らの思想を説いたことに因(ちな)んだもので、英語の「ストイック」はこれを語源としている。
ストア派はヘレニズム時代からローマ帝国時代にかけて最盛期を迎えた。
「哲人皇帝」と呼ばれ『自省録』で有名なマルクス・アウレリウスをはじめ、多くの皇帝がストア派を信奉した。またストア派は、皇帝ネロの顧問を務め、『人生の短さについて』などの名著を残したセネカや、『語録』『提要』を著したエピクテトスなど、高名な哲学者を輩出した。しかしその後、ローマ帝国に広まったキリスト教の教義と相いれないことから廃れていった。
ストア哲学が今でも人々の心を捉えるのは、物事に正しく対処するための実践的な哲学だからである。
哲学者のエピクテトスは、「満足のいく人生を送ることのほかに、美徳にどのような目的があるというのだろうか?」と語ったが、「いかに生きるべきか」は、万人にとって共通の問いである。
そして究極の問いは、人間性が試される最後の試練である「死の瞬間」にいかに備えるべきかである。
ストア哲学は、さしたる証拠もなく永遠の命を説くことがない。一方で、死について考えるのを避けたり、拒否したりもしていない。
エピクテトスは、死について次のように語っている。「死は必然であり、避けることはできない。死から逃れてどこへ行こうというのか?」。
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