イスラエルのネタニヤフ首相は4月の選挙に勝利し、5期目続投を見据える。同氏は深刻な汚職疑惑にまみれていたが、支持層の間で人気は落ちなかった。トランプ米大統領やロシアのプーチン大統領との緊密な関係がネタニヤフ人気を下支えしている。
ネタニヤフ氏は間違いなく選挙巧者だ。トランプ氏ばりに恐怖と憎悪をあおり、報道の自由をおとしめ、司法をないがしろにする手法には批判も多いが、過激な戦略は確かに功を奏した。おかげで、ネタニヤフ氏率いる右派の「リクード」は予想外に善戦。ガンツ元軍参謀総長をリーダーとする中道政党連合「青と白」との接戦を制し、第一党の座を守り抜いた。
善戦の理由として評論家の多くが注目するのは、ネタニヤフ氏の個人的資質だ。しかし、リクードが今も権勢を失わずにいられる背景には構造要因がある。経済が好調というだけではない。もっと根深い要因が作用しているのだ。
65万人のユダヤ人入植者によって建国されたイスラエルの人口は、現在では800万人に拡大している。そして、この間に起こった人口動態のシフトによって、イスラエルの社会と政治は徐々にではあるが決定的に変化した。
右派を支える人々
1980年代末以降、旧ソ連からの移民は約100万人に上り、おかげでイスラエルの科学・技術・芸術は今でも発展を続けている。しかし、ロシア系移民は旧ソ連の政治文化を引きずっているため、中央集権的な強国を理想と考え、排外主義になびく傾向が強い(イスラエルにおいては、敵はアラブ系ということになる)。
あるロシア系移民の言葉を借りるなら「プーチン氏の下で暮らすのはごめんだが、わが指導者にはプーチン氏のごとく(強い政治家で)あってもらいたい」という感覚だ。大半のロシア系にとっては、強烈な民族主義を掲げるネタニヤフ氏のほうが、パレスチナ人自治を支持する左派よりも、はるかに安心できる存在なのである。
この記事は有料会員限定です
残り 612文字
