トランプ大統領の誕生と、その根強い支持者らをめぐっては、中西部のラストベルト(さび付いた工業地帯)で置き去りのままにされた白人労働者階級による既成政治への怒りという「物語」が語られてきた。
そうした階級に生まれた悲哀と、そこから抜け出した自身の経験をつづった『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(邦訳・光文社)のような本が、トランプ支持者らの実態を知りたいという人々の要求に応え、次々とベストセラーになった。彼らが黒人や中南米系移民に反感を抱くのは、経済的不安が背景だという「道理」が暗に語られた。
これに対し、トランプは「白人優位主義」を前面に出して勝利した初めての米国大統領だと断じる反論をぶつけたのが、著名な黒人ジャーナリスト、タナハシ・コーツだ。「経済的不安こそが、人種的反感を生み出している」という見方に対し、それは人種差別の実態を覆い隠していると批判した。
コーツの主張の是非は容易に判断を下しがたい。ただ、米国の「ホワイトナショナリズム(白人民族主義)」の現状と未来を考える手がかりはある。
米国政治と人種問題で優れた論考を次々と発表している若手の政治学者マイケル・テスラーによると、「経済的不安が人種的反感を高める」というより、「人種的反感が経済的不安を高める」といったほうが適切なようだ。
テスラーは傍証として、全米科学財団の選挙研究用世論調査データを用い、2004年(ブッシュ〈子〉政権)と12年(オバマ政権)の大統領再選における、失業率と人種的反感の関連を挙げている。両大統領とも、就任後に悪化した失業率を再選前に改善させた。だが12年の選挙では、有権者の間で失業率改善を認めない傾向が出た。04年にはそうした傾向はなかった。人種的反感を持つ白人の間で、大統領が経済悪化の原因とみる傾向がオバマ時代に強まったことを裏付けるデータだ、とテスラーはみている。
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