静かなフィヨルドの湾と遠くに望む雪山、それを照らす朝焼けに言葉を失った。
チリの最南端近く、パタゴニア地方にプエルトナタレスという人口約2万人の小さな町がある。2018年8月、その町の郊外にあるホテルを訪れていた。
この日の早朝、プエルトナタレス市内でレンタカーを借り、氷河地形と湖で知られるパイネ国立公園に向かっていた。道中で偶然見つけたのがこのホテルだった。
レンタカーだから可能な旅
40歳を過ぎてから、レンタカーの利点を痛感するようになった。
最大のメリットは時間を有効に使える点だ。今回の南米も現地でわずか2泊。バス待ちで時間を浪費する余裕はない。
費用は4WDを借りて1日9920円。今回は妻との二人旅なので、バス代の合計と大差ない。
まずは郊外にあるホテル、「ザ・シンギュラー・パタゴニア」を目指す。20世紀初頭に建てられた、赤レンガ造りの低温貯蔵庫を改装した建物が売りらしい。
1泊5万円からという宿泊料は完全に予算オーバーだが、朝食だけ利用しようという魂胆だった。
だが、ラフロードを進んだ先のゲートは閉まっており、敷地内には人影もない。どうやら冬季休業のようだ。
パタゴニアの8月は真冬である。南半球の冬は北半球ほど厳しくないとはいっても、この日の予報で最低気温は氷点下だった。
メインの道に戻る手前で、小高い丘の上にある木造建築のテラスから、カップルが外を眺めているのを見つけた。
「何の建物だろう」と妻がつぶやいたので、立ち寄ってみることにした。二人だと気が大きくなる。個人宅だったとしても、「間違えました。すみません」で済むだろう。
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