「長かったですね。武勇伝が始まってしまいましたか?」。先日、私が社長室から出てくると、そう言われた。
民間企業の社員研修を請け負うことが決まると、可能なかぎり、その会社の経営者にごあいさつに伺うことにしている。5分ほどの予定が大幅に超過し、1時間近くお邪魔してしまうことが多い。それは経営者との話が、「武勇伝」から組織論に発展するからだ。
ここでいう武勇伝とは、巨額の投資を必要としたばかりでなく、高いギャンブル性を伴う事業を成功させたときの話が多い。
個人的には、新しい事業を成功に導いた現場での小さな出来事に興味があるのだが、話題はそんなところには行かない。経営者がいちばん話したいのは、どうやってその事業展開を押し通したのかというところだからだ。
どの経営者もいちばん熱く語るのは、社内での役員との攻防だ。
「するべきだと言ったのは私だけなんですよ。役員の全員に反対されて大変でした。何回会議をしたかわかりません」
私には、この部分が理解できない。だから、話を組織論のほうに展開させ、結果として長い時間お邪魔してしまうことになる。
いわゆる軍組織の中で育った私としては、どうして意思決定権者である経営者が、自分の意見を組織の意思とするのに「押し通す」という行為を必要としたのかが不思議で仕方がない。
意思決定は非合理なもの
私の知るかぎり、どこの国の軍組織も意思決定権者である指揮官と、その補佐を行う幕僚の立場を明確に分けている。それは、行う作業の性質がまるで違うからだ。組織として方針を決定するには、その準備と意思決定という二つの作業が必要となる。
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